公開日:2026/09/30
沖磯に渡ったら電波が入らない、沖に出たとたんアンテナが消えた、峠道で圏外になったなど、屋外のレジャーでは圏外は珍しいことではありません。
困るのは、そうなってから何をすればいいのかを知らないまま現地に立ってしまうことです。電波を探して歩き回った結果、足場の悪い場所で転倒したり、路肩に停めた車やバイクが事故に遭ったりと、圏外そのものより二次的な事故のほうが危険なケースもあります。
この記事では、圏外になった「その場」で何をすべきかを、海釣り・船釣り・バイクツーリング・離島のシーン別にまとめています。併せて、圏外でも空が見えればつながるスマホと衛星の直接通信サービスと、自分のスマートフォンから救助要請まで完結させる方法も解説します。
シーンごとの対処法に入る前に、どの場面にも共通する手順を押さえておきましょう。順番を守ることが、そのまま安全につながります。
圏外に気付いた際、多くの人はまず電波を探して歩き出しますが、これは最も危険な行動です。
圏外になりやすい場所には、山間部・林道・離島・海上など、足場が不安定な場所が多くあります。電波を探すために画面を見ながら移動すれば、転落・転倒・追突のリスクが高まります。
圏外になった際にはまずスマートフォンをしまい、足場の安定した安全な場所に身を置いてください。バイクや車なら、カーブの出口や見通しの悪い路肩を避けて停車し、ハザードランプや三角表示板で後続に知らせましょう。安全を確保してから、次の手順に移ります。
電波が完全に届いていないのか、端末側の一時的な問題なのかは、次の順番で切り分けられます。上から順に試してください。
なお、機内モードのままでは衛星通信も使えません。連絡やSOSが必要になったら機内モードを解除し、空が開けた場所へ出てから操作してください。
命に関わる状況では、通信が回復した時点で早急に緊急通報をしましょう。その場合の連絡先は以下の3つです。
番号 | 受理機関 | 使う場面 |
110 | 警察 | 事件・事故、行方不明など |
119 | 消防 | 急病・けが・火災など |
118 | 海上保安庁 | 海の事故、海難・転落・磯場での孤立など |
ここで押さえておきたいのが、スマホと衛星の直接通信サービスという選択肢です。
スマートフォンが普段使っている電波は、地上にある基地局から届いているものです。そのため、基地局のない山や沖合では圏外になります。これに対してスマホと衛星の直接通信サービスは、スマートフォンが宇宙空間に浮かぶ人工衛星と直接つながる仕組みです。地上の設備に依存しないため、空が見えてさえいれば、山でも海でも離島でも一部アプリのデータ通信が可能です。
スマホと衛星の直接通信サービスでは、専用のアンテナや衛星電話が必要ありません。対応機種であれば、いつも使っているスマートフォンのまま、テキストメッセージの送受信や位置情報の共有ができます。
日本では、SpaceX社のStarlink衛星を使ったサービスを大手携帯会社3社が提供しています。
KDDIの場合、auの人口カバー率は99.9%を超えるものの、面積で見たカバー率は日本特有の地形が影響して約60%にとどまっています。しかし、スマホと衛星の直接通信サービスによって、残り約40%の補完が可能になります。山間部や海上、離島の大部分が「人はいないが行くことはある」場所であることを考えると、屋外レジャーとの相性は良いといえるでしょう。
ただし、利用には以下のような条件があります。
また、携帯電話の音声通話は利用できません。
スマホと衛星の直接通信サービスは音声通話に対応していません。そのため、これまでは圏外から本人が直接緊急連絡先へ通報することができず、「衛星メッセージで家族に連絡する→家族が通報する」という二段階を踏む必要がありました。
これを解消したのが、KDDIが2026年5月28日に提供を開始した「au Starlink Direct SOS」です。SOSセンター(24時間365日運営)が通報を代行することで、圏外にいる本人のスマートフォンの対応アプリから、警察・消防・海上保安機関といった緊急通報受理機関への通報が行えます。
使い方の手順は、次のとおりです。
対象は、auの契約者と、UQ mobile・povo・他社回線で「au Starlink Direct専用プラン」または「au Starlink Direct専用プラン+」を契約している人です。利用にあたって追加料金はかかりません。対応アプリは「auナビウォーク」「auカーナビ」「ヤマレコ」に加え、「家族の安心ナビ」も順次対応予定とされています。
ただし、利用前には以下のように確認しておきたい注意点があります。
なお、海のレジャー向けには「マリンコンパス衛星緊急発報SOS」(2026年夏頃提供予定、海上保安庁への通報に対応)、登山向けには「ココヘリSOSダイレクト」(2026年4月17日提供開始)といった領域特化型のSOSサービスも用意されています。緊急時の対応を行き先に合わせて選べる時代になりつつあります。
シーン | 圏外になりやすい状況 | まず試すこと | 緊急連絡先 |
海釣り(波止・沖磯) | 波止・堤防はつながることが多いが、沖磯や断崖付近は圏外になりやすい | 安全な足場を確保→機内モードのオン・オフ→再起動 | 118 |
船釣り・沖合 | 陸から離れるほど圏外。船体が金属のため船内では電波が大幅に弱まる | 甲板など外に出る→船長・船内のVHF無線で相談。もしくはスマートフォンの衛星SOS機能や衛星通信モードを確認して、GPSは常時オンに。auのスマートフォンならau Starlink Direct SOSでの通報も。 | 118 |
バイクツーリング | 山道・峠・トンネル内で圏外になりやすい。高所が必ずつながるとは限らない | 安全な場所に停車→機内モードのオン・オフ→再起動 | 110/119/118 |
島・離島 | 入り江・海岸・山間で圏外になりやすい | 港・役場・診療所・商店・灯台周辺など人や設備のある場所へ移動 | 110/119/118 |
登山・トレッキング | 樹林帯・谷底・山小屋の裏手など、空や基地局が遮られる場所 | 安全な場所で待機→機内モードのオン・オフ→空が開けた場所へ移動 | 110/119 |
海(ボート等・全般) | 沖合は圏外。金属の船体による遮蔽も発生。 | 甲板など外に出る→船長・船内のVHF無線で相談。もしくはスマートフォンの衛星SOS機能や衛星通信モードを確認して、GPSは常時オンに。auのスマートフォンならau Starlink Direct SOSでの通報も。 | 118 |
波止や堤防、海釣り公園などでは、陸上基地局の電波が届く場所が多く、比較的つながりやすいでしょう。圏外になりやすいのは、船で渡る沖磯や断崖の直下などです。
海釣り中に圏外になった場合は、まず足場の安全を確保してください。磯場で画面を見ながら移動すると、足を滑らせて転倒・落水するおそれがあります。安全な場所に立ってから、機内モードのオン・オフやスマートフォンの再起動を試してください。
事前の対策としては、次の4つが有効です。
緊急時は118番(海上保安庁)に連絡してください。対応機種で利用条件を満たしていれば、スマホと衛星の直接通信サービスでメッセージを送信したり、au Starlink Direct SOSを利用して、SOSセンター経由で緊急通報受理機関へ通報したりできます。
船釣り・沖合では、陸地から離れるほど基地局の電波は届かなくなるものです。基地局の位置や地形、電波の指向性によって変わりますが、陸地から数km〜10km程度離れると通信が不安定になる傾向があります。実測調査では、陸から10km以上離れても通信できたケースが報告される一方、条件によっては近距離でも切れることがあります。
見落とされがちなのが、船体そのものが電波を遮るという点です。船は金属でできているため、キャビンやエンジンルームなど船内に入ると電波が大幅に弱まります。「つながらない」と思ったら、まずは甲板やブリッジなど外に出てみてください。
プレジャーボートや漁船では、携帯電話だけに頼らず、国際VHF無線機を備えることが推奨されています。国際VHFではチャンネル16が遭難・緊急用の呼び出しチャンネルとして運用されており、付近の船舶や海上保安庁へ直接助けを求めることができます。
ただし、利用においては、出力5W以下のハンディタイプなら第三級海上特殊無線技士以上、25W以下の固定型やDSC機能付きなら第二級海上特殊無線技士以上の資格が必要です。無線局の開局手続きも必要になります。
船釣り・沖合での緊急時は、118番(海上保安庁)に連絡してください。圏外の沖合では、スマホと衛星の直接通信サービスでのメッセージ送信や、au Starlink Direct SOSでの通報も選択肢になります。
走行中に圏外に気付いても、その場でスマートフォンを操作してはいけません。カーブの出口や見通しの悪い路肩を避け、安全に停車できる場所までバイクを進めてから確認しましょう。停車したらハザードや三角表示板で後続に存在を知らせてください。
その後、機内モードのオン・オフ→再起動を試します。山間部では数メートル移動すると電波がつながることもあるので、少しずつ移動して試してみてください。それでも圏外が解消されない場合は、バッテリー節約のため、必要なとき以外は機内モードに設定しておきましょう。
注意したいのは、「高い場所へ行けばつながる」とは限らないことです。山間部では基地局が谷側を向いていることもあり、稜線に上がっても圏外のままというケースはあります。圏外を解消したいなら、無理に崖上や林道の奥へ入らず、通行車や民家、施設のある方向へ向かうほうが確実です。
緊急時は、110番(事件・事故の場合)や119番(急病・けが・火災の場合)に連絡しましょう。また、海沿いを走行中に海での事故を目撃した場合は118番に通報してください。機種によっては、au Starlink Direct SOSをはじめとする衛星SOS機能を使える場合があります。
なお、パンクやバッテリー上がりなど、生命に差し迫った危険がない車両トラブルは緊急通報の対象ではありません。安全を確保したうえで、通信が回復した地点からロードサービスへ連絡するのが基本です。
連絡先はインターネットが使えないと調べられないため、電話帳に登録するかスクリーンショットで保存しておきましょう。併せて、出発前にオフライン地図を保存し、家族や友人・知人などの第三者に行程を共有しておくと安心です。
基本的に、日本の有人離島(一部の小規模な有人離島を除く)には携帯回線が整備されていますが、島内でも、入り江や海岸、山間部では圏外になりやすくなります。「島に着けば通信できる」と思い込まないことが大切です。
電波がつながりやすいのは、人や設備のある場所です。港・フェリー乗り場・役場・交番・診療所・宿・商店の周辺などへ移動してみてください。宿泊施設や公共施設のWi-Fiが使えれば、Wi-Fi通話やメッセージアプリで連絡が取れます。一方で、崖や防波堤、岩場、夜間の山道へ電波を求めて入っていくのは避けましょう。島は救助が来るまでの時間が本土より長くかかるため、事故に遭った場合、生命にかかわるリスクが高まります。
離島を訪れる際は、オフライン地図、宿・港・役場・診療所の場所、船の時刻表を端末に保存しておきましょう。人が少ない島へ行くなら、スマホと衛星の直接通信サービスの対応機種であることを確認しておくか、衛星メッセンジャーの携行も検討してみてください。
島・離島での緊急時の連絡先は、110番・119番・118番です。離島を含む渡航前の備え全般については、以下の記事で詳しく解説しています。
海上での連絡手段は、手軽なものから本格的なものまで、3つのレベルに整理できます。自分の活動範囲に合わせて選んでください。
追加の機材が不要で、手軽に利用できる連絡手段です。代表的な例として、au Starlink Directで提供されているSOS機能が挙げられます。圏外エリアでも「au Starlink Direct SOSセンター」を経由して、警察・消防・海上保安庁などの緊急通報受理機関へ直接通報できる仕組みです(条件により追加料金なし)。
沖合へ出る頻度が高い場合や、スマートフォンとは別の通信経路を確保したい場合に適している連絡手段です。
「Garmin inReach」などの衛星コミュニケーター(衛星通信を行う通信機)を利用すれば、SOSボタン1つでGarmin応答センターへ位置情報付きの通報が行えます。さらに、双方向のテキストメッセージにも対応しています。
外洋航海では、「イリジウム」や「インマルサット」といった衛星電話も選択肢になります。音声通話ができる点が、スマートフォンのスマホと衛星の直接通信サービスとの決定的な違いです。
本格的な海上活動での利用に適した連絡手段で、国際VHFやPLB(携帯用位置指示無線標識)、EPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)が挙げられます。
前述のとおり、国際VHFはチャンネル16を通じて、付近の船舶や海上保安庁へ直接救助を求められます。特定の資格所有と無線局への手続きが必要ですが、周囲の船に連絡が届くという点は衛星通信にはない強みです。
PLB(携帯用位置指示無線標識)は、406MHzでコスパス・サーサット衛星に遭難信号と位置情報を自動送信する個人用のビーコンです。総務省の「遭難自動通報局」の免許(有効期間5年)が必要で、海上での使用に限られます。山や川では使用できないため、陸上の備えとは分けて考えましょう。船舶に備えるEPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)も、PLBと同様の無線通信システムです。
手軽なものから本格的なものまで、3つのレベルに分けて連絡手段を紹介しましたが、すべてに共通する注意点があります。
屋外で圏外になったときの手順は、どのシーンでも同じです。まず安全を確保し、その場でできる復旧を順番に試します。それでも電波がつながらなければ、スマートフォンのバッテリーを温存するために、必要なとき以外は機内モードに設定しておきましょう。
しかし、圏外は「連絡が取れない状態」ではなくなりつつあります。空が見えていれば、Starlink Directサービスで対応機種のスマートフォンは衛星と直接つながるため、メッセージや位置情報を送れます。条件を満たしていれば、警察機関・消防機関・海上保安機関への通報も自分のスマートフォンで行えます。
ただし、いずれも事前の確認と設定が必要です。現地で初めて使い方を調べるのではなく、通信が安定している場所であらかじめ確認してください。屋外レジャーを存分に楽しむためにも、事前準備をしっかり行っておきましょう。