公開日:2026/08/28
衛星通信とは、宇宙にある人工衛星を中継して音声やデータのやり取りを行う通信方式です。人工衛星は上空から広い範囲をカバーできるため、山間部、海上、離島、災害で基地局が止まった場所など、地上の通信網が届きにくいエリアでも通信できます。
近年は、専用アンテナを持たなくても、普段使っているスマホがそのまま衛星につながる「衛星ダイレクト通信」が実用化されました。日本でも、auが2025年4月から「au Starlink Direct」を提供しています。
この記事では、衛星通信の仕組みから用途、料金、今後の広がりまでをわかりやすく解説します。
衛星通信は、宇宙にある人工衛星を「空の上の基地局」として使う仕組みです。ここでは、通信の基本、使われている衛星の種類、多数の衛星を連携させる技術の3つに分けて解説します。
衛星通信とは、携帯電話の基地局を経由せず、宇宙にある人工衛星を中継してデータをやり取りする通信方式です。地上の端末やアンテナ設備と、地球を周回する人工衛星との間で電波を送受信することで成り立っています。
接続の仕方は、大きく2通りに分けられます。
どちらの方式でも、人工衛星が「基地局(中継器)」の役割を果たすことで、光ファイバーや携帯基地局が整備されていない場所(山間部、洋上、災害地など)でも、広いエリアで通信を行えます。
一方で、電波は空を通るため、山や建物で空が遮られている場所では接続しにくくなります。衛星通信を使うときは「空が見えるかどうか」が基本の条件です。
衛星通信で使われる衛星には、高度約160〜2,000kmを飛ぶ「低軌道衛星(LEO)」と、高度約36,000kmにある「静止衛星(GEO)」の2種類があります。
GEOは地上から見て常に同じ位置にあるため、アンテナの向きを固定でき、1機で広い範囲のカバーが可能です。その一方、地上から遠いことで電波の往復に時間がかかるので、通信の遅延が大きくなります。
LEOは地上との距離が近いため遅延が小さく、高速な通信ができます。近年のスマホ向け衛星通信サービスの多くが、このLEOを採用しています。
項目 | 低軌道衛星(LEO) | 静止衛星(GEO) |
高度 | 約160〜2,000km | 約36,000km |
通信速度・遅延 | 高速・低遅延(数十ms程度) | 低速・高遅延(数百ms程度) |
1機あたりのカバー範囲 | 狭い(多数機の連携が必要) | 広い(数機で地球全体をカバー可能) |
主な用途 | ブロードバンド・スマホ直接通信 | テレビ放送・海上通信 |
なお、実際の通信速度は軌道だけで決まるわけではなく、利用する周波数や同時に使う人の多さにも左右されます。
衛星コンステレーションとは、数千機規模の低軌道衛星を連携させて地球全体をカバーする技術です。「コンステレーション」は英語で星座を意味し、多数の衛星が編隊を組むように配置されることから、こう呼ばれています。
低軌道衛星は1機でカバーできる範囲が狭く、上空を数分で通り過ぎてしまいます。そこで、多数の衛星を軌道上に並べ、常にどこかの衛星が頭上にある状態をつくります。
衛星は高速で移動しているため、通信中でも自動的に次の衛星へ接続が引き継がれ、通信が途切れないよう設計されています。移動中にスマホが基地局を切り替えていくのと同じ考え方です。
衛星通信は、テレビの衛星放送から船舶・航空機の通信、災害時のバックアップ回線、スマホとの直接通信まで、幅広く使われています。ここでは、個人の生活に関わりの深い3つの用途を紹介します。
衛星通信は、以下のような幅広い用途で使われています。
なかでも身近なのは、携帯電話の基地局や光回線が整備しにくい場所を補う使い方です。山間部や離島でのインターネット接続、洋上を航行する船舶との通信などが代表例にあたります。
近年では、スマホとの直接通信(Direct to Cell)と呼ばれる「au Starlink Direct」のように、普段使っているスマホがそのまま宇宙の衛星につながる用途が急速に広がっています。なお、GPSは衛星からの信号を端末が受け取って位置を計算する仕組みで、双方向でデータをやり取りする衛星通信とは役割が異なります。
具体的な通信手段の比較や選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
もしものときでも、衛星通信なら地上設備に頼らず通信手段を確保できます。圏外エリアや停電、回線断で携帯電話が使えなくなった状況でも、空が見えれば衛星で直接つながるためです。
実際に令和6年能登半島地震では、KDDIとSpaceXが避難所などにStarlink端末を提供し、避難所のWi-Fi環境づくりに使われました。併せて、車載型・可搬型・船舶型の携帯基地局を通信事業者のネットワークへつなぐ回線としてもStarlinkが活用され、携帯電話エリアの応急復旧を支えました。
個人でも「もしものときの備え」として、衛星通信に対応したスマホや端末を検討する人が増えています。ふだんから自分の機種が対応しているかを確認しておくと、いざというときに使えます。
従来の衛星通信は専用のアンテナが必要でしたが、近年ではスマホがそのまま衛星と直接通信できる「衛星ダイレクト通信」が登場しています。衛星が「空飛ぶ携帯基地局」となり、いつもの携帯電話の電波を宇宙から届ける仕組みです。
auでは2025年4月10日から「au Starlink Direct」を提供しており、auユーザーの方なら対応機種をお持ちであれば特別な機材も申し込みも不要で利用できます。2026年7月30日時点では、メッセージの送受信、写真・動画・ファイルの添付、位置情報の共有、緊急速報の受信に対応し、地図・天気・防災・登山など、一部アプリのデータ通信も可能です。
向いているシーンは、登山やキャンプ、車での長距離移動、海釣り、離島への旅行、災害への備えなどです。地上の携帯電話網が届かない場所で「家族に無事を伝える」「最新情報を取得する」「現在地を共有する」といった使い方が中心になります。
ただし、地上の4G・5Gと同じようにWebサイトの閲覧や動画視聴ができるわけではありません。圏外での連絡手段を増やすサービスと考えると、使いどころが明確になります。
「衛星通信は高い」というイメージがありますが、個人のスマホ向けサービスは追加料金なしで使えるケースがあります。一方、専用アンテナを設置する法人向けサービスは、月額数千円〜数十万円が目安です。どちらを使うかで料金は大きく変わります。
au Starlink Directは、auの対象機種を契約していれば、当面追加料金なしで利用できます。SMS送信料やデータ通信料についても、当面は無料または通常のプラン内でまかなえる設計です。
UQ mobile、povo、他社回線から利用する場合は、「au Starlink Direct専用プラン+」の契約が必要です。2026年7月30日時点の主な月額料金は次のとおりです(税込)。
利用中の回線・プラン | 加入から3カ月目まで | 4カ月目以降 |
auの対象プラン | 当面追加料金なし | 当面追加料金なし |
UQ mobile「コミコミプランバリュー」「トクトクプラン2」 | 0円/月 | 0円/月 |
UQ mobileの上記以外の料金プラン | 0円/月 | 550円/月 |
povo・他社回線 | 0円/月 | 1,650円/月 |
なお、「当面追加料金なし」という案内があることから、上記の条件は変更になる可能性があります。申し込み前に、対象となる回線・料金プラン、無料期間、契約事務手数料などを公式サイトで確認しましょう。
専用アンテナを設置する法人向けの衛星通信サービスでは、月額数千円〜数十万円程度の費用がかかります。
個人のスマホ向け衛星ダイレクト通信とは異なり、アンテナ本体の購入費も別途必要です。船舶向けや災害対策用など、用途によっては個別見積もりになることもあります。
個人が圏外対策として気軽に使いたいならスマホ対応の衛星ダイレクト通信、拠点全体のインターネット回線を確保したいなら法人向けサービスが向いています。用途に合ったサービスを選ぶとよいでしょう。
スマホと衛星のダイレクト通信は、一部の先進的なサービスから、通信業界全体で標準装備の機能へと変わりつつあります。
スマホと衛星のダイレクト通信が広がった背景には、移動体通信に関する国際標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)が、衛星などを使う通信「NTN(非地上系ネットワーク)」の仕様を定めたことがあります。この仕様に基づき、各社が実用化を進めている状況です。
国内でも、KDDIが2025年4月にau Starlink Directの提供を開始するなど、通信各社が衛星通信サービスの提供・準備を進めています。国も衛星通信の普及に向けて、衛星と携帯電話端末を直接つなぐための周波数の使用ルールを検討しています。
2026年6月時点では90機種がau Starlink Directに対応するなど、対応機種が広がってきています。緊急時の備えも進み、2026年5月28日には、圏外(au 5G/4G LTEエリアの外)から対応アプリで送ったSOS情報を24時間365日受け付け、警察や消防などの緊急通報受理機関に通報する「au Starlink Direct SOSセンター」が始まりました。
大手キャリア各社の参入と国の制度整備が進んでいることから、衛星ダイレクト通信は一時的な流行ではなく、今後スマホの標準的な機能になっていくと考えられます。
衛星通信や衛星ダイレクト通信は今後、対応機種の拡大、海外での利用拡大、地上の5G/6Gとの統合という3つの方向で発展することが考えられます。
au Starlink Directの対応機種は順次拡大予定です。現時点で対応していない機種でも、今後のソフトウェア更新や新機種の発売によって使えるようになる可能性があります。
また対応エリアは、日本国内のau 5G/4G LTEエリア外であれば、ほぼ全域が対象です。これまで圏外となっていたエリアからでも、空さえ見えれば連絡ができるようになりました。
対応機種や対応エリア、利用条件などは随時更新されるため、最新情報は公式サイトで確認してください。
au Starlink Directは海外ローミングにも対応しています。当面は申し込み不要で、2026年7月30日時点では、アメリカ・カナダへの渡航時に利用することが可能です。
【対応国・地域】アメリカ(本土/ハワイ/一部アラスカ/プエルトリコ)、カナダ(北緯58度以南)(2026年7月時点)
【対応機種】日本国内での利用とは、一部提供条件が異なります。
【ご利用条件】当面の間追加料金なし、お申込み不要。
さらに、2026年9月にはフィリピン、2026年内にはニュージーランドでの提供も予定されており、対応国・地域は順次拡大していきます。
海外旅行や出張が多い人にとって、現地で電波が入らないときの連絡手段に活用できるのは大きいでしょう。ただし、国ごとに対応機種や利用条件が異なるため、渡航前の確認が必要です。
引き続き、自社の技術力の活用とパートナーとの共創により、つながる安心をより多くのお客さまに提供していきます。
通信各社が目指しているのは、スマホ1台あれば、どのような場所でもどのような状況でも通信できる世界です。都市部では地上の基地局が大容量・低遅延の通信を担い、山間部や海上では衛星が広くカバーする、という役割分担が想定されます。
通信規格の詳細な技術動向については、以下の「NTN・LEO・非地上系ネットワーク技術用語解説」で解説しています。ぜひ、こちらもご覧ください。
衛星通信について、特に疑問を持ちやすい点をまとめました。利用条件はサービスによって異なるため、実際に使う前には公式サイトの最新情報をご確認ください。
衛星通信とは、宇宙にある人工衛星を中継して音声やデータのやり取りを行う通信方式です。広い範囲をカバーできるため、山間部、海上、離島、災害時など、地上の通信網が届きにくい場所でも通信できます。
現在は、対応スマホが衛星と直接つながる「衛星ダイレクト通信」が実用化されています。auの「au Starlink Direct」なら、対象機種・プランを契約していれば当面追加料金なしで、au 5G/4G LTEのエリア外でもメッセージの送受信や位置情報の共有が可能です。
利用の条件は、対応機種であること、対応回線・料金プランを契約していること、空が見える場所であることの3つです。圏外での連絡手段や緊急時の備えとして、まずは自分のスマホが対応しているかを一度確認しておきましょう。