公開日:2026/08/31
登山では、「通信」も安全を支える装備の1つになります。今回は、長野県・北八ヶ岳の双子池ヒュッテ周辺を実際に歩きながら、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「au Starlink Direct」、登山アプリ「ヤマレコ」、そして衛星ブロードバンドStarlinkを山小屋に設置する「山小屋Wi-Fi」が、登山者の安心・安全をどのように支えているのかを体験しました。
目次
「登山中にスマホは使えるの?」「もしもの時、圏外だったらどうすればいい?」——登山を計画する際、林道で使える通信手段について疑問を抱く人は少なくありません。その答えとなるのが、「衛星とスマートフォンが直接通信するサービス」と「オフラインで動く登山アプリ」の活用です。
登山道や林道では携帯電話の電波が届かず、スマートフォンが圏外になる場所も多いのが現状。一方で、衛星とスマートフォンが直接通信する「au Starlink Direct」を利用すれば、圏外エリアの山でも、空が見える場所であればメッセージの送受信や位置情報の共有などが可能になります。登山では、天気を確認する、現在地を把握する、ルートを見直す、家族へ無事を伝える――そうした必要な情報取得や連絡ができる通信環境が重要になります。
今回訪れたのは、長野県・北八ヶ岳にある双子池ヒュッテ。登山アプリ「ヤマレコ」を提供する株式会社ヤマレコ代表取締役・的場一峰さんにご協力いただき、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「au Starlink Direct」を担当するKDDI株式会社・パーソナル事業統括本部の田吹健太郎、「au Starlink 山小屋Wi-Fi」を担当するビジネスグロース事業本部の鴨下裕介とともに、山の通信環境が登山者の安心をどのように支えているのかを体験しました。
標高約2,030mの山小屋・双子池ヒュッテ
北八ヶ岳を訪れる登山者に人気の双子池
登山道を歩き始めると、周囲は深い森に包まれていきます。市街地では当たり前につながっていたスマートフォンも、山では通信が不安定になる場所があります。そんな「圏外」の環境でも登山者を支えるのが、登山アプリ「ヤマレコ」です。登山者が写真や歩いたルート(GPSログ)を共有する山行記録を中心に、登山計画の作成や現在地確認など、山を安全に楽しむための機能を備えています。
携帯電話の電波が届きにくい場所もある双子池周辺
「ヤマレコのアプリ自体は、圏外でも使えるように設計しています。登山する前に登山ルートや地図をダウンロードしておけば、電波が届かない場所でも現在地確認やルート確認ができます。そこに通信が加わることで、さらに安心につながりますね」そう話すのは、ヤマレコ代表取締役の的場一峰さん(以下的場さん)。
YouTubeでも登山に関する有益な情報を多数発信している的場さん
「au Starlink Direct」とは、地上の基地局を介さず、人工衛星とスマートフォンが直接通信するKDDIのサービスです。空が見える場所であれば圏外でもメッセージ送受信や位置情報共有ができます。
普段ならスマートフォンですぐ確認できる天気やルート情報が、山ではその場で取得できないこともあります。だからこそ、何より大切なのは登山前の準備です。地図のダウンロードや登山に必要な持ち物の確認に加え、通信環境について知っておくことも、登山する上で重要になります。
そこで注目されるのが、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「au Starlink Direct」です。
「『au Starlink Direct』は、地上の基地局を介さず、衛星とスマートフォンが直接通信するサービスです。空が見える場所であれば、衛星と直接通信できることが大きな特徴です」と、KDDIの田吹健太郎(以下KDDI・田吹)。
プライベートでも登山をする KDDI・田吹。的場さんとの会話も弾む
「au Starlink Direct」は、圏外エリアでテキストメッセージの送受信や位置情報の共有などができる通信サービスです。登山中の位置情報を定期的に送信する「ヤマレコ」と組み合わせることで、衛星通信が可能な環境では、家族や仲間が登山者の位置情報を確認できるようになります。
「衛星SOSボタン」とは、登山アプリ「ヤマレコ」に搭載された緊急通報機能です。圏外でも「au Starlink Direct」経由で位置情報や負傷状況を「au Starlink Direct SOSセンター」へ送信し、警察・消防への通報につなげます。
もちろん、どれだけ準備をしていても、予期しない事故が起こる可能性はあります。だからこそ、登山で万が一に備えて準備すべき通信手段をあらかじめ整えておくことが大切です。そんな圏外でのトラブル時に頼りになるのが、この機能です。
「自分で110番をして救助要請をしなければならない状況、つまり自分やパーティのメンバーが動けなくなった場合には、衛星SOSボタンを使ってください。ひどい捻挫で応急処置をしても動けない、といった怪我が原因の場合だけでなく、低体温症や熱中症によって体調が悪化し、補給や休息をしても動けない場合も、救助を要請する必要があります」(的場さん)。
衛星SOSボタンの操作画面
林道を歩きながら、的場さんに「衛星SOSボタン」について解説いただく
「衛星SOSボタン」で送信された情報は、「au Starlink Direct」を介して「au Starlink Direct SOSセンター」※1へ送られます。GPSによる位置情報や登山ルート、負傷状況など、救助活動に必要な情報を共有し、警察や消防などの緊急通報受理機関への通報につなげます。
2026年5月末から、「au Starlink Direct SOSセンター」が24時間365日体制※2で情報を受信し、圏外環境でも迅速な救助要請につなげる機能が提供されています。※3
開発背景にあるのは、圏外でも必要なタイミングで救助を求められる環境を整えること。これまで圏外で事故が発生した場合、家族や周囲の人を介して救助要請をする必要がありました。しかし「au Starlink Direct」を活用することで、本人から直接通報できる可能性を広げています。
本サービスは通報の代行であり、救助活動の実施や成功を保証するものではありません。
双子池ヒュッテでは、衛星ブロードバンド・Starlinkを利用した「au Starlink 山小屋Wi-Fi」(以下、山小屋Wi-Fi)も導入されています。山小屋でインターネットを利用できる環境は、家族とゆっくり連絡を取るなどの快適性を高めるだけでなく、登山者の安全な判断や山小屋運営を支える新たなインフラになっています。たとえば、高速通信が可能なため、山道の状況や翌日の天気などを写真や画像で確認し、天候や登山道の状況に応じて、行程を変更したり、無理をせず下山したりする判断にもつなげられます。また、携帯電話のキャリアを問わず利用できる点も特徴です。auをご利用の場合は無料で利用できるほか、au以外のキャリアをご利用の場合も有料で利用できます※4。
「屋根に設置していただいている白いアンテナが『山小屋Wi-Fi』の設備です。そこから山小屋内でインターネットを利用できる環境を整えています」そう説明するのは、KDDIの鴨下裕介(以下KDDI・鴨下)。
この小さなアンテナが、山小屋の通信環境を支えている
「山小屋Wi-Fi」の導入による変化を見てきた的場さんは、「山小屋Wi-Fiは、登山者の利便性を高めるだけではなく、予約管理やスタッフの職場環境など、山小屋運営そのものを変えています」と話してくれました。
これまで圏外の山小屋では、キャッシュレス決済や予約管理システムの利用、地上との連絡手段などに制約がありましたが「山小屋Wi-Fi」によって、都市部と同じようなWi-Fi環境を山小屋でも利用できるようになり、運営面にも変化が生まれています。
「au Starlink Direct」が登山道など移動中の通信を支える一方、「山小屋Wi-Fi」は山小屋での滞在や運営を支えています。それぞれ異なる役割を持ちながら、登山者が安全に山を歩き、無事に下山するための判断を支える通信インフラになっていることを、今回の体験を通じて実感しました。
左からKDDI・田吹、的場さん、KDDI・鴨下。双子池ヒュッテ前にて
実際にスムーズにキャッシュレス決済が利用できました
双子池ヒュッテで、たまたま居合わせた3人組の登山者にも話を伺うことができました。3人は約3年前から一緒に登山を楽しむ山仲間。普段から登山アプリを使うこともあるそうで「緊急の時につながると心強いと思います」という声も。そんな話をしていると、「衛星」という表示は見たことがあるものの、実際の使い方が分からないという声も上がりました。
そこでKDDIの担当者が設定方法を案内し、3人にも実際に衛星通信を体験してもらうことに。
テントや屋根の下ではなく、空が大きく開けた場所へ移動し、端末が「衛星」モード※5へ切り替わったことを確認すると、「つながった!」と笑顔が広がる3人。
普段使い慣れたスマートフォンが、圏外エリアの山でも通信できることを実感した瞬間でした。
衛星モードに切り替わると、スマホ画面上部に人工衛星アイコンが表示されます
衛星通信でメッセージを送り合えた瞬間「つながった!」と歓声が上がりました
今回、感じたのは、通信は「もしものため」だけではなく、安心・安全な登山のためにも役立つものだということ。天候や登山道の状況を確認するなど、登山者が安全な判断をするための情報を得ることにもつながります。山小屋運営を支えるだけでなく、登山者の安心・安全を支える新しい通信インフラなのです。
レインウェアやヘッドライトと同じように、登山前にはアプリのダウンロードや設定、通信方法の確認も大切な準備の1つ。
これからの登山では、「通信」もまた、安心して山を楽しむための備えになっていくのかもしれません。
登山者の安心・安全と山小屋運営を支える新しい通信インフラのポイントは、以下の3点です。