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「春高バレー」を拡張! 5Gでスポーツの楽しみ方や指導現場はどう変わる?

2020.1.31

Sports

1月5日から12日まで武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた「ジャパネット杯 春の高校バレー 第72回全日本バレーボール高等学校選手権大会(以下 春高バレー)」にて、KDDIは、バレーボールの観戦やプレーの体験を拡張する取り組みを実施した。

この取り組みで行った未来のスポーツ体験は二つ。「観戦」の拡張としては、スマートグラス「NrealLight」を活用した「AR観戦」体験の提供。「プレー」の拡張としては、画像認識AI技術を活用しフォームを解析する「目指せハイスコア! センサーサーブゲーム」や、VR上で元日本代表・狩野舞子選手と一緒にプレーできる「狩野舞子VR×レシーブチャレンジ」のブース展開だ。

スマートグラスを通したスポーツ観戦体験

「AR観戦」体験は、1月12日の決勝で実施。試合中にスマートグラス「NrealLight」をかけると、試合のスタッツ、ローテーション、出場選手の情報をARでリアルタイムに確認できるというもの。コートのすぐそばに特設席を設置し、お客さま(auスマートパスプレミアム会員の中から招待)に、迫力満点のプレーを楽しみながら「NrealLight」をかけてもらうという形だ。

「NrealLight」を体験する様子

「NrealLight」はスマートフォンと接続して使用するスマートグラス。設定はスマートフォンを操作し、専用のアプリを起動したのちに、視線の中心を合わせる簡単な操作のみ。

視線を右に振ると視界の中に出場選手のリストとともに身長や最高到達点といった各選手のデータ、視線を中心に戻すと得点経過、左側にはアタック決定数・決定率・ブロック数・サービスエース数といった試合のスタッツが実際の会場風景の中に、デジタル映像として表示されるようになっている。

NrealLightから見たAR観戦イメージ

このデータは会場にいるスタッフがiPadでリアルタイム入力。それをサーバーにアップして数秒で「NrealLight」に反映している。現時点の4G環境で20台を同時に稼働させてもタイムラグを感じることはあまりなかったが、5G環境ではさらに多くのスマートグラス着用者にデータを提供することができそうだ。

「NrealLight」

KDDI パーソナル事業本部 ビジネスアグリゲーション本部 アグリゲーション推進部長 繁田光平に、この施策を実施した上での手応え、今後の活用法などを聞いた。

KDDI パーソナル事業本部 ビジネスアグリゲーション本部 アグリゲーション推進部長 繁田光平
KDDI パーソナル事業本部 ビジネスアグリゲーション本部 アグリゲーション推進部長 繁田光平

「観戦されている方によって、欲しいデータはさまざまです。今回提供したスタッツはバレーボール経験者の方が見るととても面白いでしょうし、バレーボール観戦は初めてという方も、例えば『あのイケメン選手の名前は?』と、すぐに気になる選手の情報を見られるようになります。スマートグラスの良いところは、スマートフォンで検索をしなくても自然に情報が出てくるということなんです。ターゲットごとにどう異なる情報を出すかということが、次の展開になると思います」(繁田)

野球で例えると、バックネット裏の席には配球の情報、外野席には応援歌や応援の方法の情報を出すなど、座席の位置によってデフォルトでの情報を変える形があると繁田は続けた。

将来的には、手元のコントローラーを通してドラッグアンドドロップし、スマートグラス内のスクリーンの情報を変えながら観戦することもできるようになるという。

繁田が以前、チェイス・センター(米カリフォルニア州サンフランシスコ)でNBA観戦をしたときに印象に残ったことは、「応援の一体感」。テクノロジーを活用してどのようにファンの一体感を高めていくか、と改めて考えるきっかけとなったようだ。

「一体感を高めるための演出には、まず大型のビジョンという選択肢があると思いますが、ビジョンは簡単には設備投資ができません。一方、観戦している時もみなさんはスマートフォンを持っていたりします。気軽にスマートフォンを通して応援に参加できたり、さまざまなスマートデバイスを活用して応援ができたりしたら、そこまで大きな投資をしなくても会場の一体感につながっていくでしょう。

昨年も会場内のAR空間にマスコットキャラクター『バボちゃん』のメッセージ画像を投稿して応援できる、『ARエール』という企画を実施しましたが、応援の拡張という点は今後ももっと力を入れていきたいですね」(繁田)

コーチングの現場を革新する技術を体験

「目指せハイスコア! センサーサーブゲーム」と「狩野舞子VR×レシーブチャレンジ」は、会場内の特設ブースに設置。

「目指せハイスコア! センサーサーブゲーム」は、その場でサーブをしてもらい、どれだけ正しいフォームで打てているか判定するというもの。フォームは崇城大学・増村雅尚准教授の監修のもと、KDDI総合研究所が開発した行動認識AIにより全身の骨格65点から身体の動きを抽出し解析。

「目指せハイスコア!センサーサーブゲーム」体験の様子

点数とともに「適切な高さのトスを上げている」「ボールが真上に上がっている」等の5項目について○×の判定が行われる。また、ボールはアクロディアが開発したセンサー内蔵のIoTスマートボールを使用。サーブ速度や回転軸・回転数の数値を判定する。

「目指せハイスコア!センサーサーブゲーム」体験中の画面

「狩野舞子VR×レシーブチャレンジ」は、VRゴーグルを用いて狩野選手のプレー風景をさまざまな角度から視聴できるとともに、専用のセンサーバンドを通して、VR上で相手コート側から打たれるサーブをレシーブ。レシーブがうまくいくと仮想空間上で狩野選手がアタックをしてくれる。

「狩野舞子VR×レシーブチャレンジイメージ」体験の様子
狩野舞子VR×レシーブチャレンジイメージ

今回は特設ブースに設置されたアトラクションという形だが、これらの技術は、プレーヤーの練習やコーチの指導を拡張することができるものだ。

「“定性的なコーチング”が“定量的なコーチング”に変化していくことが重要です。例えば野球での『伸びのあるボールを投げろ』などといった指導を、『回転数を上げる』という事実に基づいてトレーニングすることができれば、気合・根性の世界ではなく、効率的に選手が自分で考えた結果回転数が上がり、伸びのあるボールが投げられるということにつながります」(繁田)

「目指せハイスコア! センサーサーブゲーム」でのサーブ解析は、パソコンと専用のIoTボールさえあれば可能。ボールについては一部競技ですでに販売も行っており、野球のボールであれば3万円と比較的リーズナブルだ。

そのため、野球における「トラックマン」などといった数百万レベルの大規模な投資が可能なプロスポーツよりも、まずはアマチュアスポーツ、かつ科学的なトレーニングが難しい中学生・高校生の部活動において使ってもらいたいと繁田は語る。

現在はサイズの大きいデータという特性上パソコンを通して解析しているが、今後5G環境が導入されることでスマートフォンからも使えるようになるなど、さまざまな環境での解析が可能となる。さらに、この技術を使用した多くのプレーヤーによる膨大なデータも公開・共有できるようになり、それらのデータを参照し練習に活用することもできる。

KDDI総合研究所が開発した「狩野舞子VR×レシーブチャレンジ」の自由視点VRは、トップ選手のプレーを体験することで、より良いプレーのイメージを膨らませることができるものだ。

16台の4Kカメラ映像から3Dモデルの映像を生成しており、かつセンサーバンドによりユーザーの動きを瞬時に解析しサーブが成功したかどうかを判定。高速で大容量の5G環境でより活きるコンテンツとなっている。

未経験の子どもから若い頃にバレーボールをプレーしていたお父さん・お母さん世代まで幅広い方が体験ブースを訪れる様子に「自分の実力を知りたいというニーズがあると改めて思いました」と繁田。

サーブを点数で解析したり、VR上で成功するか試したりというコンテンツは、前述の「指導」の現場の拡張のみならず、試合会場を「エンターテインメント」として拡張させるものとしても活用法がありそうだ。

スポーツ×5G活用は「あらゆるリアルの体験をアップデート」

繁田は、スポーツ領域で5Gを活用する狙いについて「auは、これまでも音楽におけるLISMOなど、エンターテインメントを大事にしてきたブランドです。5Gについても、目的を持って人が集まっている熱量のある場所に重ね合わせることで、何か大きな変化が起きるのではと考えています」と語る。

スポーツにおける5G導入によるメリットと言えば、動画配信への活用がまず思い浮かぶが「リアルのデジタル化」という点もあるという。

「例えば、試合をVRで遠隔でも観られるようになる。そのような配信事業のみに留まってしまってはビジネスとして循環していきません。5Gによって、スポーツにおけるリアルの体験価値を上げられるのではと力を入れています。

これまでも実際にKDDIはスマートグラス、応援企画、自由視点映像のコンテンツを実施してきました。将来的には飲食の注文を自席から行い並ばずに買えるようにしたり、これからも、リアルにおけるスポーツのあらゆる体験をアップデートしていきたいですね」(繁田)

早速、1月18日から25日に行われたフリーライドスキー・スノーボード世界選手権「Freeride World Tour Hakuba Japan 2020」においては、滑走する選手の映像と、速度・高度・位置などのデータを組み合わせて大型モニターにリアルタイム表示するという観戦体験も提供した。

今後も、KDDIはスポーツの現場における体験のアップデートを目指していく。

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