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NrealLightスマートグラスが“見せる”未来の暮らし

2019.9.30

Entertainment

最近、テレビや新聞などでも名前を目にするようになったスマートグラス。カメラやマイク、GPSなど、さまざまな機能が内蔵され、スマートフォンのように活用できると期待されている。しかし、専門的な産業分野では導入が始められているものの、一般にはあまり普及していないのが現状だ。

「NrealLight」イメージ資料より

そんな中、中国のスタートアップ企業Nreal Ltd.(エンリアル リミテッド)が今年の1月に革新的なスマートグラス「NrealLight」を発表。従来品よりも軽く、視野角も広いという特徴から、世界中で注目を集めた。KDDIは5月にNreal Ltd.とパートナーシップを結び、国内に普及させるための共同プロジェクトを進行させている。

KDDIサービス本部 プロダクト開発1部 プロダクト2グループ 王健
KDDIサービス本部 プロダクト開発1部 プロダクト2グループ 王健

このスマートグラスとはどういった性能で、私たちの暮らしをどのように変えるのか、KDDIサービス本部の王健に詳しい話を聞いた。

スマートフォンと繋いで本体の軽量化を実現! 誰でも気軽に使えるグラスに

スマートグラス「NrealLight」
スマートグラス「NrealLight」 ※掲載写真は開発中のもの。以下写真同。

インタビューの前に.のスマートグラスの実物を見せてもらった。一見では普通のサングラスと見分けがつかない。重さも88gと非常に軽く、装着しても違和感がなかった。

スマートグラスに接続するスマートフォン(参考写真)

普通のサングラスと大きく違うのは、フレーム部分の末端にケーブルが接続され、スマートフォンと繋がっている点だ。王によれば、このスマホとの接続こそが、Nreal Ltd.のスマートグラスの一番の特徴だという。

「これまでKDDIは、空港のラウンジや野球試合中の札幌ドームなどでスマートグラスの実証実験を行ってきました。従来のグラスを使った人の感想を集計すると、最新技術に興味を示す声が多い一方で、『バッテリーが短く長時間使えない』、『重すぎて長く装着していられない』という感想が少なくありませんでした」(王)

従来のスマートグラス本体にはバッテリーが内蔵されていたため、その重さがどうしても普及の壁になっていた。

スマートグラス「NrealLight」を装着したところ
スマートグラス「NrealLight」を装着したところ

しかし、スマートグラス「NrealLight」はスマートフォンから給電して利用できるため、バッテリーを付ける必要がなくなり、軽量化できたのである。

「スマートフォンをコントローラーにしてスマートグラスを操作できるので、初めて使う人でも簡単に扱えるのもポイントです。専用アプリをインストールして、画面をタップするだけ。生産コストも低く抑えられるため、多くの人が気軽に利用できる道が見えてきました。

今後5G対応のスマートフォンに接続すれば、5Gの高速通信などのメリットを活かすことができます」(王)

グラスを掛けるだけでプライベート映画館が目の前に現れる

記者が実際に装着してみると、会議室の机の上には、近未来的な都市の光景やゴロゴロと遊びまわる猫の姿の姿が映し出された。現実の景色とバーチャルな映像が重なって見えるため、都市や猫が本当にその場に現れたかのように感じられる。室内にある家具やその隙間などの空間情報をグラスに内蔵されたカメラが認識して、映像を破綻なく見せられるよう調整しているのだ。

スマートグラス「NrealLight」には近接センサーやカメラが内蔵されている
スマートグラス「NrealLight」には近接センサーやカメラが内蔵されている

「スマートグラスを掛けると、目の前に100インチの仮想テレビが表示され、きれいな画質で3Dの映画鑑賞ができます。

スマホやタブレットと違って、見ている映像はグラスの中に表示されるので、ベッドやソファーの上で仰向きに寝ころびながらも観られますし、周囲の人からはのぞき見ができません。ですから、いつでもどこでもプライベートに大画面で映画を楽しめますし、家だけではなく、新幹線や飛行機の中でも使えます! 便利ですね!」(王)

博物館の展示品や歴史ある建造物など、実際に目の前にあるモノの情報をサーチして表示する機能の研究も進んでいる。

「最近、博物館を見学しました。日本の国宝は素晴らしかったのですが、展示物に関する説明が足りないと感じました。そんなときにスマートグラスを掛けて、国宝に関わる歴史の映像が表示されたら、今よりもさらに博物館を楽しむことができるようになるでしょう」(王)

また、高速・低遅延の5Gを活用できるようになれば、大容量の情報をクラウドで高速に処理してストリーミングできるため、従来のスマートフォンでは難しかった高解像度のゲームやアプリなどを、スマートグラスを掛けるだけで楽しめるようになるという。これまでの日常の景色は、スマートグラスによってバーチャルと融合し、全く別のものに変わってしまうかもしれない。

日常の困ってしまう場面をスマートグラスがサポートする

折畳スマートグラスモック

王はスマートグラスが近い将来、私たちの生活を支える機器として活用されるようになると語った。

「博物館だけではなく、買い物、旅行、アート、教育、スポーツなど、幅広い領域で生活シーンが変わるでしょう。

例えば買い物。スーパーマーケットに行ったとき、今日の夕食に何を買うべきか迷います。そんなときにスマートグラスを通して視線を合わせただけで、生産地や生産者の思い、ネットショッピングのように他人の評価も確認できるようになります。

AIが発展すれば、使用者の健康状態を考えた食品と料理メニューをおすすめしてくれるようになるかもしれません。こうしたことで買い物はかなり楽になりますよね。

さらにスーパーマーケットからも、その場でお客さまに合わせたクーポンの発行やダイナミックな会員価格表示などの新しい施策ができるようになれば、今までのビジネスの常識を破ることができるかもしれません」(王)

また、個人のサポートだけでなく、人とのコミュニケーションでも活用できると話す。

「ビジネスの場で、突然声をかけられたが相手の名前をなかなか思い出せないことがありますよね。スマートグラスに相手の名前や役職を提示してくれたり、さらに約束事やスケジュールなどが、対面するだけですぐチェックできる機能が生まれれば、より円滑に仕事の話ができるようになります。

こういった、普段何気なく困ってしまう場面をスマートグラスがサポートして、多くの人がより快適に日常を過ごせる世界を目指していきたいです」(王)

今後スマートグラスは、さらなる小型化やケーブルを使わない遠隔的な充電が期待されているとのこと。そうなれば現在のスマートフォンのように、私たちの生活に欠かせないものになるかもしれない。今回のNreal Ltd.のスマートグラスが日常で使われるようになるのは、そう先の話ではなさそうだ。

文/堀田隆大
写真/鈴木渉

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