近年、スマホやモバイルバッテリーなどに広く使われるリチウムイオン電池の出火事例が増加しています。これを受け、環境省では2025年9月から12月にかけて「リチウムイオン電池による火災防止強化キャンペーン」を実施しています。KDDI・ドコモ・ソフトバンク・楽天モバイルは、スマホをより安心・安全にご利用いただくため、本キャンペーンのLiBパートナーに参画し、情報発信を行っています。
環境省リチウムイオン電池火災防止啓発キャラクター「たぬも」
【目次】
近時、モバイルバッテリーの事故に関するニュースが増えており、東京消防庁の報告によるとモバイルバッテリー/スマホ・携帯電話の出火件数も増加傾向にあります。KDDIでも、お客さまからのご申告に基づき、スマホや携帯電話のリチウムイオン電池に関する事故を調査することがありますが、原因のほとんどが、外圧や落下など外部応力(強い圧力や衝撃)、分解、外部熱(高温)など明らかな外部要因によるものとなっています。
出典:リチウムイオン電池搭載製品の出火危険(東京消防庁)
KDDI リチウムイオン電池事故の分類(2023年~2025年)
スマホやモバイルバッテリーに内蔵されているリチウムイオン電池の状態は直接確認できませんが、非常に繊細な部品であり、強い圧力や衝撃によって電池内部が損傷すると、発煙や発火につながるおそれがあります。
スマホに強い圧力が加わると、筐体に凹みが残ることがありますが、目視で確認できる凹みがある場合は、危険な状態と判断でき、また目立つ凹みがなくても、強い圧力が加わった心当たりがあり、異常を感じた際には、使用を中止し、修理にお持ちください。
電池事故の事例:筐体背面の凹みを起点に電池が発火
強い圧力を加えた際の影響については、下記リンクの検証記事をご参照ください。
また高所からの落下など強い衝撃に関しても、リチウムイオン電池の内部を損傷させる可能性があります。こちらも落下後に異常を感じた際には、使用を中止し、修理にお持ちください。
スマホ内部のリチウムイオン電池を取り出して廃棄する、または電池を交換することが目的と考えられますが、スマホの筐体の隙間にドライバーなどの工具を差し込み、こじ開ける行為によって、リチウムイオン電池を傷つける場合があります。スマホの多くがリチウムイオン電池を内蔵しており、取り出しできない構造になっています。
リチウムイオン電池を取り外すための分解は、電池を損傷させる可能性があるため、絶対にやめてください。
また一般の方がスマホを分解した場合、メーカーの修理を受けられなくなる可能性があります。さらに、分解後に電源を入れると、法律違反(電波法違反)となります。
電池事故の事例:ニッパー等で挟んだ痕跡
電池事故の事例:電池にドライバー等の鋭利な物が差し込まれた痕跡
分解を想定した再現検証については下記リンクをご参照ください。 (絶対にマネはしないでください。)
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)は、リチウムイオン電池を搭載した製品をインターネットで購入する際、高リスクな製品を避けるための注意点として、①『ほかの製品と比べて極端に安価ではないか』、➁『信頼できる販売元かどうか(国内の連絡先が存在するか)』、③『「PSEなどのPSマーク」の近くに事業者名があるか』、④『廃棄する方法はあるか』を確認することを提唱しています。
また経済産業省では、インターネットを通じて販売を行う海外事業者への規制強化を行い、お客さまが安全に使用できる環境の整備を目的とした製品安全4法の改正が2025年12月25日に施行される予定です。さらにインターネット取引における製品の安全性確保のため、ネットパトロールも実施されています。安全基準への適合を確認するために電話やメールで複数回連絡しても回答がない企業を「連絡不通事業者」として公表される予定です。
<参考>
KDDIでは、 MCPCと京セラと合同でインターネットで購入できる比較的安価な「非純正品の互換性電池」と「モバイルバッテリー」について、品質の確認を行いました。
その結果、「電池内部の電極に巻きずれがあるもの」や、「破裂や発火を防ぐ安全弁がないもの」、 さらに「表示が必要なPSEマークが本体にないもの」など、品質に問題がある製品が複数確認されました。
本体にPSEマークがない
巻きずれ
電極の巻きずれ(X線写真)
安全弁がない交換用電池パック
安全弁がない
導線の絡み
プラスマイナスの導線が絡んでいる(ショートの懸念あり)
京セラで電池を担当されている中島さんに、調査結果について解説を伺いました。
購入された電池の品質が不十分な場合、火災(発火・発煙)の事象の可能性がありますので、十分にご注意ください。
京セラ 中島さん
リチウムイオン電池に異常と感じた時の対処について、信州大学の是津教授からコメントをいただきました。
「異常を感じたら使わない/触らない/預ける」という、3原則
スマートフォンやモバイル機器が異常に熱くなる、膨らむ、液漏れする、異臭や異音がするなどの症状が見られた場合、内部の電池が損傷している可能性があります。そのまま使い続けることで、発煙や発火につながる可能性がありますので、ただちに使用を中止し、電源を切ってください。
また、充電が遅くなった・できなくなった、充電時に以前より著しく熱くなる、突然電源が切れるといった変化、電池の劣化や内部短絡の前兆である場合があります。こうした異常を感じたら、使用を中止し、修理店へ相談してください。
<異常を感じた時にやってはいけないこと>
異常を感じても慌てず、正しい対処をしてください。以下の行為は危険ですので、絶対にやめてください。
<万が一発火した場合は>
リチウムイオン電池に詳しい
信州大学 是津教授
スマホにはリチウムイオン電池が内蔵されていますので、廃棄・処分する場合は、必ず自治体のウェブサイトなどを確認し、指定された方法で処分してください。(自治体によって廃棄・処分の方法が異なります。)誤った捨て方をすることで、内蔵された電池がゴミ収集車に挟まれたり、ゴミ処理施設で強い圧迫や衝撃が加えられ、火災が発生する事例が報告されています。特に大掃除や引っ越しの時期はご注意ください。
スマホを処分する際に最もおすすめの方法は、最寄りのau Style/auショップ、UQスポット、トヨタのau取扱店に持ち込むことです。KDDIでは、ブランドやメーカー、通信会社を問わず、不要になったスマホ・携帯電話・タブレットや、それらの電池を無償で回収しています。
スマホの廃棄・処分方法については下記リンクの記事もご参照ください。
また、KDDIでは、2025年10月より、ローソンにてスマホ・モバイルバッテリーの回収の実証検証も開始しております。この取り組みは、環境省の「令和7年度 リチウム蓄電池等適正処理対策検討業務」の一環として実施されるもので、茨城県守谷市内のローソン2店舗に回収ボックスを設置し、使用済みスマホやモバイルバッテリー、加熱式たばこなどを対象に回収を行います。回収ボックスには温度・重量センサーを搭載し、発火リスクを低減する設計を採用。ゴミ処理施設などで発生するリチウムイオン電池由来の火災事故を防ぐとともに、回収した端末はKDDIのリサイクルルートを活用し、レアメタルなどの再資源化を進めます。KDDIは、全国のauショップで培ってきたリサイクルの知見を活かし、今後は実証結果を踏まえて取り組みの拡大も検討しています。
さらに、 2026年4月からスマホやモバイルバッテリー、加熱式たばこは、資源有効利用促進法の「指定再資源化製品」に追加され、メーカーや輸入販売業者に対し、自主回収・再資源化の促進が義務づけられる見通しです。 KDDIでは、こうした制度改正に先行して回収体制を強化し、安全性と資源循環の両立を図ることで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
KDDI・ドコモ・ソフトバンク・楽天モバイルでは、MCPCと連携して、スマホを安全にご利用いただくための情報を発信しています。
KDDI Tech Note「安価なバッテリーに潜むリスクとは?リチウムイオン電池搭載製品品質の現在と未来」にも本内容を含め、記事を掲載しておりますのでこちらもご覧ください。
<解説:品質管理担当者>
システム戦略部 桑田卓哉
本ページは、京セラ株式会社、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)信州大学のご協力のもと作成しています。