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TEAM auの藤井快

【TEAM au インタビュー】藤井快 引退のイメージは湧かない

昨夏の国際大会を終え、スポーツクライミング界が新たなシーンへと突入した2022年、W杯シーズン開幕前の3月にTEAM auの各メンバーにインタビューを実施。30代に差しかかるもボルダリング、リードともに日本のトップレベルであり続けている藤井快には、円熟味を増した競技生活の胸の内、子育てや家族への想いを聞いた。

2週連続の表彰台も......挙がった多くの改善点

まずは3月に行われた国内開幕戦のボルダリングジャパンカップ(※1 以下BJC)の感想から教えてください。

「実力不足を痛感させられたと言いますか。自分のできること、できないことを明確にされたような大会でした。特にコーディネーション(※2)の動きや、完登目前に終わった決め切れなさに改善点を感じました。それと、僕は胴体が壁から外側に吐き出されるような状態がすごく苦手で。手と足が近くにあるとそうなりやすいので、その距離感の調整をうまくしていきたいです」

※1 ジャパンカップは日本山岳・スポーツクライミング協会が主催する各種目の国内一を決める大会。毎年行われ、その年の日本代表選考も兼ねている
※2 クライミングにおける動き方(ムーブとも言う)の1つ。手足等を連続して繰り出すダイナミックな動き

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第17回ボルダリングジャパンカップの決勝課題を登るTEAM auの藤井快
ボルダリングジャパンカップでは3位に入り、今季初戦を表彰台で飾った(写真:窪田亮)
3位という結果自体はどう評価していますか?

「表彰台には乗れたので最低限の目標は達成できたと思いますけど、あの大会は(同じTEAM auの楢󠄀﨑)智亜がめちゃくちゃ強くて、さすがにへこみましたね(笑)。決勝はただ一人全完(全課題完登)での優勝でしたし、僕がまったくできなかった課題がたくさんあったので、そういうところでの差も感じました」

ボルダリングにおける今の自身の長所と短所について教えてください。

「短所は言い出したらキリがないんですけど、今一番意識しているのは上半身と下半身のバランスの悪さですかね。これは、先ほど触れた手と足の距離感の話とも繋がる部分です。長所は......正直ない、と言いたいところです(苦笑)。練習でも調子が良いと思う時はたまにしかなくて、智亜とかと一緒に登ると圧倒的な差を見せつけられてしまうこともあるので」

第35回リードジャパンカップの表彰台に上がったTEAM auの藤井快
リードジャパンカップでも3位。BJCに続いて男子決勝に進んだのは藤井のみだった(写真:窪田亮)
藤井選手には大きな穴がないイメージがあります。

「器用貧乏なんですよ(笑)。それをいい意味で捉えれば、全体のバランスの良さが長所と言えるかもしれません。様々なタイプの課題にある程度は対応できると思いますし、まったくできない課題はないかな?と思えるので」

BJCの翌週に開催されたリード国内一決定戦のリードジャパンカップでも3位となり、異なる種目で2週続けて表彰台に立ちました。

「もちろん優勝を狙っていましたし、リードは今季のW杯に出場できる日本代表権を持っていなかったのでボルダリングよりもフォーカスして練習していたんです。その上での3位だったので、『うーん......』と思うところはありました。決勝の課題はいわゆる"リードクライミング"の持久力が求められる内容で、『これくらいの持久力は最低限持っていてほしい』というルートセッターの意図を感じるものでした。それを勝ち切れなかったので持久力はまだまだ足りないなと思いつつ、ただそれ以上に予選から全課題を通じてバランス良く、ある程度のパフォーマンスは発揮できたので悪くはなかったと感じています」

インタビューに答えるTEAM auの藤井快
常に高みを目指す。そこに慢心は一切ない
リードにおける短所はどう捉えていますか? 今おっしゃった持久力はやはり改善点でしょうか?

「持久力は絶対的にそうですし、加えて『焦ってしまうところ』です。パンプ(疲労が溜まって腕が張る)してから粘れないというか。僕を含めて日本人選手はみんなそうなんですけど、パンプして追い詰められるとそこから数手で落ちてしまうことが多くて。練習でどんなに追い込んでも、まだまだ追い込みが足りないといつも思います」

反対にリードの長所は?

「これも良くも悪くも大体の課題をそつなく、ある程度できるところですかね。僕はある意味平均的なクライマーなので、課題内容によってはその課題が得意な選手に勝てないことがあります」

子どもはとても愛おしい存在 「優しいパパでいたい」

ここからは、競技以外の話題についてお聞きします。2016年のTEAM au発足当初からメンバーに名を連ねている藤井選手ですが、6年が経過した今、あらためてTEAM auの存在をどう感じていますか?

「サポートのおかげで今の結果があるので、本当にありがたい限りです。もらっている以上のものを恩返しできるように頑張りたいですし、今は国内で強い選手がたくさん増えてきているので、TEAM auが神格化されるくらいチームみんなでもっと強くなりたいですね。『さすがTEAM au』『TEAM auかっこいい!』なんてもっと言ってもらえるように。サポートしてもらっているからには、やっぱりそれくらいじゃないと」

インタビューに答えるTEAM auの藤井快
TEAM auを「神格化したい」と頼もしい言葉を発した
昨年は智亜選手と野口啓代さんが結婚されるという、TEAM au内でおめでたい出来事がありました。

「本当におめでとう、という感じですね。家庭を持つと強さに繋がることがあるので、智亜もどんどん強くなっていくのかなと思います」

結婚生活の先輩として、智亜選手にアドバイスはありますか?

「しっかり啓代さんを支えてあげてほしいと思います。女性は大変なことが多いので、男性がサポートできる時はしてあげないと。そこに尽きますね。それと僕もそうですけど、お互いの主張が強過ぎるとぶつかってしまうので、夫婦円満のためには男性が尻に敷かれるべきじゃないかなと思います(笑)」

藤井選手は2020年にパパとなりましたが、ご自身の中で何か変化はありましたか?

「心配事が増えますよね。子どもは守らなきゃいけない存在ですし、しっかり育てていかないといけないので。責任感と使命感で良い緊張感があります。何とかして家族に食べさせていかないとって感じています」

そういう意味でも、プロ転向1年目となった2021年は藤井選手にとって大きな1年となったのではないでしょうか?

「気負い過ぎてしまわないか心配だったんですけど、それがむしろ良い方向に向いてくれました。世界選手権で優勝することもできましたし、出来過ぎくらいの年でした」

家ではどんなパパなんでしょうか?

「優しいパパであったらいいですね(笑)。手が空いている時はオムツ替えをしたり、ご飯を作ったりしていますが、日中は練習に行ってしまうので妻に任せてしまうことが多いです。なので奥さんには頭が上がりません(笑)。練習のない日は自宅近くの公園に連れて行って、走り回ったり、好きなアンパンマンの乗り物に乗ったりして遊んでいます。歩けるようになったり喋れるようなったりする成長の過程を見ていると、とても愛おしいですしこの子の幸せを守ってあげたいと思います」

インタビューに答えるTEAM auの藤井快
愛する子どもの存在、妻への感謝。家族がいる幸せをかみしめるように話した
子育て以外で最近興味のあることはありますか?

「言おうか悩むんですけど......バレエを最近始めました」

言おうか迷ったというのは?

「みんな真似して強くなったら嫌だなって(笑)。僕は器が小さいので、あまり他の選手が強くなるようなことは言いたくないんです。僕が引退してから強くなってほしいと思っちゃいます」

やはりクライミングに繋がるから始めたのでしょうか?

「はい。トレーニングの一環としてです。体幹部の強さが求められますし、今のところ股関節や足の使い方が参考になっています」

現在のクライミングの練習頻度は週何回ほどですか?

「週4日か5日ですね。割合で言ったらボルダリング2割、リード8割くらいです。今年のW杯シリーズ(各種目7戦まで予定されている)の参戦スケジュール的に4、5月はボルダリングしかなくて、その期間は調整も含めてほぼボルダリングしかできないので、6月のリード第1戦に向けてリードの練習の貯金をしているイメージです」

ボルダリングウォールを登るTEAM auの藤井快
新たにバレエにも取り組み始めるなど、実力向上に余念がない
リードについては以前から「かっこいい」ともおっしゃっていますよね。

「観ることに関しては、僕はリードのほうが好きなんです。リードって例えばマラソンと同じように、他の競技に比べると見てるだけではすごさが伝わりづらいと思うんですよ。でも実際に自分が走ってみて、トップ選手がどれくらいのスピードで走っているのかを知ると『嘘でしょ?』ってなるじゃないですか。リードもある程度難しくなってくると『この高さでこんなホールドを持たなきゃいけないんだ』とか、『あそこで(ボルダリングで言う)二段、三段というグレード(※)の難しいムーブが求められるのか』と感じる、すごくシビアな世界なんです。『いやいや、僕なんかたった10m登っただけで腕がパンパンになってるんですけど』みたいになることもあるくらいなので、リードに取り組んでいる人ってすごいなと純粋に思います。ボルダリングの場合、クライミングを日常的にしている一般の人が僕と同じ課題を登った時に、動きに差はあるにしても登れることもあります。しかし、リードだとそうはいきません。表現が難しいですけど、リードはボルダリングとは違ったスケールの大きさがあるので、すごくかっこいいなって僕は思うんですよね」

※ボルダリングの難易度。段級位制で表す

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選手としてのピークは2024年 「今くらいは魂を燃やして頑張りたい」

藤井選手は今年11月で30歳となります。30代の意気込みを教えてください。

「疲れ具合や回復力は10代、20代前半の頃よりも少しずつ落ちていると実感しています。そこは素直に受け入れつつ、若い選手たちに『いつまでたっても抜けないな、あのオッサン』と思われるようになりたいですね(笑)。今はまだ引退のイメージは湧かないですし、大きな国際大会のある2028年、35歳くらいまでは頑張りたいと思っています。ずっと強くありたい、常に前線で戦い続けたいと思います」

ボルダリングの課題を見つめるTEAM auの藤井快
30代でボルダリング競技の一線を戦う選手は少ないが、藤井の挑戦はまだまだ続いていく
藤井選手には、若手にはない経験という強みがありますよね。

「より長く、健康的にクライミングをする意識を持つことでケガをしにくくなり、結果的により強くなることに繋がると思っています。30代になってもしっかりとしたパフォーマンスを発揮できて、良い成績も残せる。その先駆者のような存在になれたらいいなと思います。僕もそうでしたけど、若いとどうしてもあり余る力で登ってしまうので、大人な登りをしていきたいです(笑)」

今、一番の目標は2024年の国際大会でしょうか?

「そこでの金メダルが大きな目標です。日本開催の出場が叶わず、次こそはとずっと考えていたので。2028年、35歳くらいまでと言いましたけど、選手としての最大のピークは2024年に持っていきたいと思っています。今発揮できる力のすべてをそこに注いで、そこから先もっと続けたいと思うのであれば2028年も目指すかもしれないですし。(国際大会での実施種目が3種目複合からスピード単種目とボルダリング・リードの)2種目複合になって、より熾烈な争いになる。人生は短いので、今くらいは魂を燃やして頑張りたいですね」

今シーズンの目標は何でしょうか?

「9月にアジア競技大会が行われます。そこで2024年の国際大会における2種目複合フォーマットが採用されるので、まずはそのフォーマットをしっかり理解すること、そして勝つということが日本代表の使命だと思いますし、個人的にもやらなきゃいけないことだと思っています。W杯に関しては(翌年のW杯シーズンの出場権を獲得できる)世界ランキングのトップ10入りを目指して、来年に少しでも余裕を持たせてシーズンを終えたいと思っています」

最後に「今年は自分のここに注目してほしい」というポイントがあれば教えてください。

「今年は前々シーズン、前シーズンと比べて出場大会数が増え、長くタフなシーズンになることが予想されます。そんな中でもケガせず、常に決勝にいる僕の姿を観てもらいたいなと思います。全力で頑張ります!」

TEAM auの藤井快
ベテランの域に達してもなお高いモチベーションを保つ藤井の今後が楽しみだ

※掲載内容は2022年3月時点の情報です。

取材・文:CLIMBERS編集部
写真:永峰拓也
撮影協力:B-PUMP 荻窪店

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