ログイン
  • au × CLIMBING ABOUT
  • HOW TO CLIMB
  • TEAM au MEMBER
  • au SPORTS LINKS

クライミング世界選手権でボルダリング男子を制した藤井快

クライミング界は次なる時代へ 野口啓代が競技引退後初めて見た世界選手権

9月16日から21日にかけてロシア・モスクワで行われたクライミング世界選手権。TEAM auの藤井快がボルダリング男子で初優勝したこの大会には、同じTEAM auで今夏に競技生活を引退した野口啓代の姿もあった。引退後に初めて大会を現地観戦した彼女の目に、世界最高峰の舞台はどう映ったのか。その景色を聞いた。

まずは世界選手権を現地観戦したかった理由から教えてください。

「私自身、世界選手権に対して思い入れがありますし、今年は夏に大きな国際大会があった中で、そこに出られない分この大会に懸けている選手たちのパフォーマンスが気になっていたのと、反対に両方の大会に出る選手についても注目していました。やはり画面を通して見るのと現地で観戦するのとでは空気感など感じられるものがまったく違うので、世界選手権は絶対に現地で見たいと今シーズンが始まる頃から考えていました」

野口さんのシニア国際大会デビューも2005年の世界選手権(ミュンヘン大会)でしたね。

「はい、16歳の時の世界選手権です。私たちまでの世代にとっては、2年に一度行われる世界選手権が最も大きなタイトルでした。多くの国のクライマーが集い、出場選手数もその年で最多の大会です。私は世界選手権に照準を合わせて競技をしていた期間が長かったので、憧れや思い入れがあります」

今大会はどのようなスケジュールで観戦しましたか?

「日本人選手がエントリーしていなかった(大会1日目の)スピードを除いて、ボルダリングとリードの男女全ラウンドを観戦しました」

大会会場での1枚。野口啓代はボルダリングとリードの男女全ラウンドを現地観戦した
大会会場での1枚(写真:Base Camp)
久しぶりに選手ではない立場から大会を観戦してみて、全体的な感想はいかがでしょうか?

「完成度がすごく高いと思いましたね。ボルダリングもリードも、予選から決勝までの課題内容や勝負展開が本当に素晴らしかったです。2018年のインスブルック大会、2019年の八王子大会も良い印象がありましたし、今回が第17回ということで歴史もありますし、年々レベルの高い大会になっているなと感じています」

それは演出など競技面以外も含めてという意味でしょうか?

「そうですね。世界選手権のロシア開催は今回が初めてだったんですけど、これまでのW杯などにしてもロシアは日本や欧米に比べると若干盛り上がりに欠けていた気がして、正直なところそこまで期待せずにモスクワに向かったのですが、まず日本の大会でこんなに大きな会場はないんじゃないかというくらい立派な施設に驚きました。床や柱がタイル張りで豪華でしたし、迷子になるくらいの広さで(笑)。近年の世界選手権と同様にプロジェクションマッピングを導入していて、演出にもこだわりが見られました。観客も入れての開催でしたし、W杯も含めてもこんなに盛り上がる大会は八王子大会以来なんじゃないかなと」

クライミング世界選手権の観客
新型コロナウイルスの感染対策をした上で、ロシア・モスクワの会場には観客が集った(写真:Base Camp)
選手を引退した今だからこそ感じられる経験ができたのではないでしょうか?

「開催してくれる方々やスタッフの方々のおかげで大会が成り立ち、これまでたくさんの大会に出続けることができ、楽しませてもらえたのだとあらためて感じられました。現地に住んでいる日本人の方と交流する機会もあって、ロシアはスポーツに力を入れていて素晴らしい施設がたくさんあること、実は親日で日本人のことを応援してくださっているということを聞いて、私は今回が4回目のロシア訪問だったんですが、行くたびにロシアのイメージが良くなりましたし、大会の内容も良くてとても貴重な経験になりました」

その他に何か気づきや発見はありましたか?

「今年のW杯でも感じていたことではあったのですが、新しいスター選手が多く誕生した大会だったと思います。ファイナリストの顔ぶれやその年齢層、あとはこれまでだと決勝に残れなかったような国の選手が活躍しているのを目にして、これも時代の流れじゃないですけど、変化のタイミングなんだなと思いました」

クライミング世界選手権でボルダリング競技を撮影する野口啓代
現地では"カメラマンデビュー"も。本人は「こんなにいい位置で競技を見られるなんて」と振り返った(写真:Base Camp)
ボルダリング女子では2位にカミラ・モローニが入り、世界選手権ではイタリア人女子初のメダル獲得となりました。

「彼女はこれまでもいい順位にいて、名前は知っていたんですけど、ブレイクスルーする大会になりましたよね。印象的だったのは男女ともイスラエル勢が強くなっていて、男子ではボルダリングで1人決勝に残りましたし、女子でも決勝に残るんじゃないかと期待を持たせる順位に選手がいました」

世界的にクライミングの熱が高まってきている中で、強豪国以外の実力の底上げが感じられたというところでしょうか?

「今はSNSが盛んなので、それを見て学んだり真似したりして、コーディネーションやスラブ(緩傾斜壁)への対応をはじめとして、技術がすごく向上していますよね」

以前のインタビューでは、競技引退後はTEAM auの魅力を伝えていきたいというお話がありました。今大会には楢﨑智亜、藤井快、伊藤ふたばの3選手が出場しましたが、野口さんの感じる彼らの魅力、そして今大会の結果について教えていただけますか。まずは楢﨑選手からお願いします。

「楢崎選手は、今シーズンが始まった頃からずっと今夏の国際大会と世界選手権の両方で優勝すると公言していて、そこは他の選手とまったく違う目標の立て方だなという印象がありました。今夏に懸ける選手が多く、その後の世界選手権まで目標に入れている選手は楢﨑選手だけだったと言ってもいいくらい、チャレンジ精神にあふれる選手ですよね」

世界選手権でボルダリング種目に挑むTEAM auの楢﨑智亜、伊藤ふたば、藤井快と野口啓代
今大会には楢﨑、伊藤、藤井の3選手がTEAM auから出場した(写真:Base Camp)
競技における特徴はどう感じていますか?

「コーディネーションムーブが得意で、スピードもここ何年かでタイムを縮めているように身体能力がずば抜けている印象がみなさんにはあると思いますが、それ以上に私が感じているのは『苦手を潰す能力』がすごく高いことです。私もそうだったんですが、自分の長所で弱点を補う選手がほとんどで、苦手なものを克服できる人ってあまりいないんです。その中で楢﨑選手は大会がない冬のシーズンに一つずつ苦手なものを克服していて、さらにそれを毎年続けていることがすごいと思います」

それは自分の弱点を見つける能力と、それを改善する能力の両方で優れているということでしょうか?

「そうですね、苦手なものを的確に見つける能力もそうですし、それを克服するためのやり方がわからなかったり、身体の使い方や力の込め方を知らないケースがほとんどなんですけど、それを誰かに教わったり真似したりという様々な克服方法がある中で、そのコツを掴むのがうまいと思います。教わったらそれをすぐ自分のものにして、次の年には自分の手札に加えている印象があります」

そんな楢﨑選手ですが、世界選手権ではボルダリング2位、リード5位で男子選手の中では唯一2種目で決勝に進みました。

「今夏の国際大会ではメダルに届かず、その結果を自分の中で消化するのが難しい時期だったと思うんですが、そこから1カ月半しか経っていないにもかかわらず、まず世界選手権に出たこと自体がすごいと思いましたし、優勝こそ逃してしまいましたが、スピードへの取り組みをやめてボルダリングとリードに今後の出場種目を絞るという苦渋の選択をした上で、しっかりリードでも実力を発揮したことはさすがだなと思いましたね」

世界選手権でリードクライミングに挑む楢﨑智亜
楢﨑は男子選手で唯一ボルダリング、リードの2種目で決勝に進出した(写真:アフロ)
続いて藤井選手の特徴や魅力は何でしょうか?

「彼の魅力は、登りのスタイルや技術というよりも、まず本当にアスリートらしい性格をしているところにあると思っています。とにかくストイックで真面目。それは練習内容や量を見ていてもわかりますし、食事に関してやコロナウイルスの感染対策もそうです。アスリートとしても人間としても徹底している姿勢には見習いたいものがあるといつも思っています」

競技面で印象的な部分はありますか?

「緩傾斜壁での登りというか、足の使い方がとても成長しています。今回のボルダリング決勝では3課題目のスラブを一人だけ一撃しましたし、6月のW杯インスブルック大会決勝でもスラブ課題を唯一完登していました。もともとは緩傾斜壁が苦手で、私が初めてW杯で藤井選手を見た時は難しい課題はできるのにみんなが登れているスラブができず、いつも『スラブができない』と嘆いていた印象がありました。それが今では誰も登れないようなスラブ課題を一撃するくらいに克服して強みにしています。クライミングシューズを変えたことも理由の一つだと思いますが、相当練習したし、長い期間をかけて取り組んできたことが聞かずしてもわかるくらいです」

ボルダリング男子決勝でスラブ課題を登る藤井快
ボルダリング男子決勝でスラブ課題を登る藤井。ウィークポイントの克服が戴冠に繋がった(写真:アフロ)
藤井選手は今大会で見事にボルダリング優勝を果たし、リードでは準決勝に進み13位でした。

「大会直前には私の実家にある『au CLIMBING WALL』にもトレーニングしに来てくれて、間近で登りを見ていたので楽しみにしていました。これまでの世界選手権では表彰台に上がっていなかったし、国際大会の選考では悔しい思いもしていたと思うので、誰よりも気持ちが入っていたんだと思います。優勝できたことで自信を得られたはずですし、またリードでも学びがあり、とても価値のある大会だったのではないでしょうか」

特に決勝第一課題は藤井選手だけがゾーンを取りTOPホールドまで到達しました。

「欠場したアダム・オンドラ(チェコ)などの有力選手がいたとしても彼が優勝していたと思えるほど、決勝は本当に神がかった内容でしたね」

ボルダリング男子でワンツーフィニッシュを果たした楢﨑智亜と藤井快
ボルダリング男子でワンツーフィニッシュを果たした楢﨑(左)と藤井。競技後は野口の構えるレンズに向けて笑顔を見せた(写真:野口啓代)
最後は伊藤選手です。彼女の魅力はどこにありますか?

「とにかく努力家で、強くなるために常に様々なことを取り入れているイメージがあります。さらに世界でもあそこまで体が柔らかい人はいないんじゃないかというくらいの柔軟性が持ち味だと思いますね。私も体は柔らかいほうですけど、彼女はレベルが違うくらい、特に股関節や胸椎が飛び抜けて柔らかいです。壁の中に入り込むような動きや、可動域を目一杯使うような動きにかけてアドバンテージがあると思います」

残念ながら大会前に右肘を負傷したそうですが、それでもボルダリングで準決勝に進出し13位という成績でした。

「今大会は彼女にとって今年一番のビッグイベントでしたし、表彰台には乗りたいと聞いていた中で調子も上げていたようなので、その後のケガは残念でした。思うようにいかなかった部分があったと思いますが、ボルダリングジャパンカップで2度も優勝するなど19歳にして十分に強いですし、私にはそれ以上に伸びしろがあるように見えます。まだまだこれからの選手なので、今後が楽しみですね」

ボルダリングで完登する伊藤ふたば
右肘の負傷を抱えながらもボルダリング女子準決勝に進出した伊藤ふたば(写真:野口啓代)
課題の傾向についても教えてください。ボルダリングではコーディネーションの課題が流行った時期もありましたが、今はどのような印象をお持ちですか?

「今年はクライミング本来のクラシックな要素を取り入れつつ、それでいて現代的な部分もあって一番バランスが良い時期だと思います。特に今大会のボルダリング決勝は男女とも全完登しないと優勝できないような内容で、実際に優勝選手はすべて登り切りました。ただ、課題が簡単だから全完登できたわけではなく、コーディネーションにもスラブにも、真っ向勝負のパワフルな課題にも対応できて、それでいてアテンプト数も少ないという、穴が少なく、かつ強さも備えた選手が制した大会でした」

リードについてはいかがでしょうか? 近年はランジなどボルダリングのダイナミックなムーブが取り入れられてきました。

「以前のほうがボルダリングのムーブが入った内容で、最近はかなりクラシックに寄っていて最上部で勝負をつける課題がほとんどだと思います。特に男子決勝では最後の5手以内くらいに7選手ほどがひしめいていましたよね。リザルトがしっかり付いているので問題はないと思いますが、見ている側としてはもう少しボルダリングのムーブが入っていて下部から難しい課題も見たいという気持ちはありますね」

野口さんの思うクラシックな要素とは?

「しっかりとホールドを保持して落ちないポジションを決めてから動き出さないといけないという点と、さらにリードではレストを取り入れるタイミングのうまさや体に負荷のかからないムーブのこなし方といったリードクライミングの本来の技術、でしょうか」

クライミング界の勢力図は今後どのようになっていくと予想しますか?

「やはり大きな国際大会の実施種目に採用されたこともあって、戦国時代のように激化していくと思います。クライミング人気の高まりで競技人口が増え、強豪国やそれまでの歴史は関係なく、今大会でもそうでしたがセンスのある選手は国を問わずにどんどん台頭してくるでしょう。ですがその一方で、政治力や資金力のある国も存在感を発揮していくはずです。例えば米国だと、これまでは岩場で活躍するクライマーにスポットライトが当たる向きがあったのですが、競技のほうにも視線が注がれるようになり、サポートが厚くなったことで今シーズンは躍進が目立ちました。また姉妹都市を持つような国だと、大きな大会の前にはキャンプ地を決めやすいという利点もあります。

またスピード、ボルダリング、リードの3種目複合に取り組む必要がなくなったので、スピード専門選手はスピードだけにエネルギーを注げるし、ボルダリングとリードの選手も2種目に絞って活動できます。スポンサー企業も増え、環境面や資金面でもストレスなく競技に集中できる選手が増えると思うので、よりハイレベルで魅力的なクライミングを見ることができるのではないでしょうか」

※掲載内容は2021年10月時点の情報です。

取材・文:CLIMBERS編集部
写真:AP/アフロ

powered by climbers

商品・サービス
スマートフォン・携帯電話
インターネット回線
au HOME
エンタメ
ショッピング
ポイント・決済
auでんき
auの金融・保険サービス
サポート
My au