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いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 スピードクライミング編

いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 スピードクライミング編

知っているようで知らないスポーツクライミングやボルダリングの基礎知識を連載形式で解説していく本連載。第10回は、スポーツクライミング3種目のうちの1つ「スピード」の魅力を、スピードジャパンカップ(以下SJC)初代王者であり、TEAM au楢﨑智亜選手の練習パートナー、同・野口啓代選手のコーチを務める池田雄大選手に聞いた。

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スピードジャパンカップ初代王者の池田雄大選手。

ルールはシンプル。"どれだけ速く登れるか"

まずは簡単に、「スピード」とはどのような種目なのか、教えてください。

ルールはシンプルで、もっとも速く登った選手が勝つ種目です。高さ15mの壁に、世界共通のホールド配置がされていて、最上部にあるゴールパッドを叩くことでゴールとなります。大会ごと、1課題ごとに登るコースの内容が変わるボルダリングやリードとは違い、どの大会でも同じコースを登るため、3種目の中で唯一世界記録があります。現在(2021年2月)の世界記録は、男子が2017年に計測された5.48秒、女子が2020年に計測された6.96秒です。日本ではTEAM auの楢﨑智亜選手が男子最速で5.90秒、女子最速は同じTEAM auの伊藤ふたば選手で8.32秒の日本記録を保持しています。

大会はどのように進んでいきますか?

ラウンドは予選と決勝の2つです。予選は1人2回ずつタイムの計測をして、参加人数によりタイムの上位8名もしくは16名が勝ち上がります。決勝は予選のタイムレース方式と異なり、対人戦のトーナメント方式で行われます。トーナメントの準決勝勝者がビッグファイナルと呼ばれる1位決定戦に、敗者が3位決定戦に回ります。

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高さ15mの壁に設けられた世界共通コースを登るスピード種目。
スピード種目の初代国内王者でもある池田選手にとって、その魅力とはなんですか?

"速さを競う"というシンプルなルールなので、瞬間的に観客が盛り上がるんです。決勝トーナメントに関しては2人が並んで行う対人戦ということもあり、わずか5~6秒で繰り広げられるデッドヒートの様子に会場全体の温度が急上昇して、毎回興奮しますね。

目の前の選手と戦う対人戦ということも大きな魅力ですよね。

スピード種目には"絶対"が通用しません。例えば陸上競技の絶対王者が"途中で転ぶ"ようなことが、スピードクライミングでは十分に起こり得るんです。相手が競技中にホールドを踏み外すようなミスをする可能性があるので「もしかしたら勝てる」と思える。わずか数秒の出来事でどんでん返しが発生したりして、ドラマのある種目なんですよ。

スピードでミスをする確率が高い理由はなんですか?

"勝って当たり前"という意識が、思いのほか本人にプレッシャーを与えるんです。僕自身、2020年の第2回SJCでは予選を1位通過したものの、決勝は初戦で敗退しました。第1回王者のタイトルを防衛する側として「完全に勝とう」と意気込んだ結果、ミスが誘発されました。追いかける側に回れば、"120%を出さなければ負ける"一戦なので、練習以上の結果が出ることもあります。

メンタル面が勝敗を左右する、繊細な競技でもあるんですね。3月に控えている第3回SJCは無観客での開催ですが、会場の雰囲気も影響するのでしょうか?

トップ選手たちは、メンタルの影響を加味しても"本番で練習以上の力を発揮できる"人が多いです。また、会場の雰囲気や歓声には常に背中を押されます。無観客は寂しいですよね。

"トモアスキップ"が、スピード種目の時代を変えた

日本におけるスピードクライミングの歴史も教えてください。

日本がスピードクライミングに本格的に取り組みはじめたのは、コンバインド種目(ボルダリング・リード・スピードの3種目を複合した採点方式)の採用が決まった5年ほど前からです。スピード専用壁がある施設が増えるなど急ピッチで普及がはじまり、2019年には第1回スピードジャパンカップ、海外の強豪選手を招いたエキシビションマッチ「au SPEED STARS」が開催されました。

[関連記事]
いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 3種目編

国内での競技普及は最近のことだったんですね。他国も同じ流れを辿ってきたのでしょうか?

クライミングは、国によって各種目の人気順位が異なり、その歴史も同様に異なります。日本はボルダリング、リード、スピードという人気順で、選手層の厚さも比例していますよね。ですが、例えば同じアジア圏のインドネシアではスピードが最も人気で、同国のエリーズ・スーザンティ・ラハユ選手は女子初の6秒台到達者としても知られています。この他、スピード種目の強豪国には中国やロシアなどが挙げられます。ロシアでは50年以上も前から競技としてスピードクライミングが行われていたとも言われているほど、日本とは違って歴史があるんです。

日本人クライマーは、スピードとの相性はいいのでしょうか?

スピード種目は、体格のよさやリーチという武器を活かしてパワーを生み出し登っていくタイプと、身のこなしや身体のポジションを調整しながら巧みに登る巧緻(こうち)タイプに分かれます。ロシアなどのヨーロッパ勢はパワー型、中国はバランスのよい中間型、日本とインドネシアは巧緻型に分類されます。日本人クライマーのスタイリッシュな身体の巧緻性は、スピード種目にも向いていると思います。

パワー型と巧緻型で、その登り方は大きく異なりますか?

パワータイプの選手は、陸上の投擲(とうてき)選手のような身体つきだったりします。最近のスピード強豪国は、ヨーロッパからアジアに移行してきています。楢﨑智亜選手がタイムを大幅に縮めることができる独自の登り方「トモアスキップ」(写真下)を披露してから、スピード種目における時代が変わりました。

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楢﨑智亜選手(写真内右)が編み出した「トモアスキップ」。楢﨑選手の頭のちょうど左にあるホールドを経由せず、そのまま真上に進むことでタイムの短縮が可能になった。

他国の選手も「トモアスキップ」の導入をはじめましたが、この方法にフィットするのは体格の近しいアジア勢です。このムーブを会得してから、中国やインドネシアはさらにタイムを伸ばしているように思います。反対に、パワータイプの選手は身体的な違いから、その導入に苦戦しているようです。

ボルダリングやリードにはない、スピードのみに必要とされる要素はありますか?

どの大会でも同じコースで行われるスピードは、練習回数に比例して上達していく種目のため、反復練習が必須です。また爆発的な瞬発力と最大パワー値を上げるための筋力も必要ですが、体重に関してはボルダリングやリードほどシビアではありません。スピードは、ボルダリング・リードとはまったく別物と捉えていて、"陸上競技に近い"と感じていますね。

"陸上競技に近い"スピードと、性質の異なる他2種目で強さを両立することは可能なのでしょうか?

難しいと思います。3種目全てでトップの実力を持つ選手はほぼ皆無です。また、習得に時間が掛かるボルダリング・リードのトップ選手がスピードに着手するという流れは実現されていますが、スピードを専門とする選手が他種目に流れる傾向は見られません。特例が、抜群の身体能力を持つ楢﨑智亜選手です。彼はボルダリングで世界選手権王者に輝き、リードでもW杯で表彰台に上がる実力を持っていますが、スピードでも昨年に日本人初の5秒台をたたき出しました。5秒台中盤まで出せるようになると、誰も彼に追いつくことはできないでしょう。

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第3回スピードジャパンカップをはじめ、楢﨑選手の今後の大会でのタイム向上に期待したい。
最後に、日本におけるスピード種目の展望を教えてください。

現在、日本国内ではJMSCA(日本山岳・スポーツクライミング協会)がユース選手の育成にも力を入れているので、将来は若い有望選手がどんどん現れてくる可能性があります。また、3月のSJCでは第1回スピードユース日本選手権も同時開催されます。SJCでは楢﨑智亜選手がどのようなタイムを出すのかにも注目ですが、ユース日本選手権では多くの若手選手たちが台頭することにも期待したいですね。

※掲載内容は2021年2月時点の情報です。

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  • 池田雄大(いけだ・ゆうだい)
    1998年1月1日生まれ、千葉県出身。日本スピードクライミング界の先駆者であり、スピード種目におけるジャパンカップの初代王者。競技者でありながら、指導にも熱心で、TEAM au野口啓代のコーチも務めている。2020年3月には、自身が店長のクライミングジム「OLIOLI」が千葉県一宮町にOPENした。

取材・文:横畠花歩
写真:窪田亮

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