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いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 日本ボルダリングの強さの秘密編

いまさら聞けないボルダリングの基礎知識 日本ボルダリングの強さの秘密編

知っているようで知らないボルダリングの基礎知識を連載形式で解説していく本連載。第9回は、今や世界屈指の選手層を誇るボルダリング日本代表は、いつから、なぜ強豪国となったのか? その理由を元日本代表で現在は大会の中継解説も務める伊東秀和氏に聞いた。

流れを決定づけた楢﨑智亜のボルダリング世界一

現在、日本はボルダリング大国と形容されることも多いですが、強くなったのはいつ頃からでしょうか?

10年くらい前から女子でTEAM auの野口啓代選手、リード種目になりますが男子で安間佐千さん、もっと遡ると平山ユージさんもW杯で複数回の年間王者に輝く活躍をされてきました。ただ、それは孤軍奮闘という感じで、他の国と同じように一つの国に1人や2人、突き抜けて強い選手がいるというイメージでした。

日本全体で一気に結果が出て、強さが出てきたと感じるのは2015年〜2017年にかけてでしょうか。2017年頃には、W杯各大会でのファイナリストの半分を日本人が占めてしまうような展開が多くあり、明らかに他の国よりも突出していました。

そうした流れが生まれたきっかけはありますか?

大きな流れが来たのは、(現在TEAM auに所属する)楢﨑智亜選手が2016年にボルダリングW杯の年間優勝と世界選手権優勝を果たしたときです。それ以前にも杉本怜選手や元選手の堀創さんなど、優勝経験のある選手はいました。ただ、今のように優勝争いに常に日本人選手が絡むような流れになったのは、楢﨑選手の影響が大きいと思います。彼が世界チャンピオンになったことで、同世代の若手選手が「自分たちもいけるんじゃないか」と勢いづいてきました。

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2016年の世界選手権パリ大会で日本人初の世界王者に輝いた楢﨑智亜。(写真:CLIMBERS編集部)
楢﨑選手の世界チャンピオンという結果が起爆剤となって、日本人選手のレベルが爆発的に向上したというわけですね。

タイミングの良さもあったと思います。とくに男子選手は17〜20歳くらいの間に急激に能力が伸びていきます。日本に最も伸びるタイミングを迎える選手が多くいる時期に、楢﨑選手の世界チャンピオンという結果が重なったことで、一気にレベルが引き上げられたというイメージだと思います。

量、質ともに増加した日本のクライミングジム

そもそも日本のボルダリングが強くなった要因、背景はどんなところにあると思いますか?

まずはこの3年くらいの間に国内のクライミングジムの数が増えて、練習環境が整ったというのは間違いなく要因としてありますね。数が多いだけでなく、世界トップクラスの選手でも難しく感じ、練習になる課題を作っているジムも多くあり、近隣の韓国の選手は頻繁に日本へ練習に来ているほどです。

環境面では、伊東さんのように指導者の存在も大きいのではないでしょうか。

世界での経験を持った選手が引退後にコーチとして後進にしっかりとその経験を伝えていることも大きいと思いますね。コーチだけでなく、世界の課題を経験したルートセッターがいたり、トレーナーとしてサポートしたり、ジムを作ったり、コンペを開催したり。なにかしらクライミング界に関わって日本の発展に貢献しているという背景もあると思います。

世界ユース選手権でのボルダリング実施が追い風に

日本代表の活動に変化はありましたか?

海外遠征の増加など、ユース代表も含めてチームとして動くことが増えたことも要因にあげられます。若い頃から海外での生活、海外の壁の大きさや課題のスタイルを経験できていることは大きいと思います。

また、以前はリードとスピードしかなかった世界ユース選手権の実施種目に、2015年からボルダリングが追加されました。その最初の年から、今の日本代表である緒方良行選手と原田海選手がワンツーフィニッシュ(ユースAカテゴリー)を決めています。W杯デビューをする前から世界大会での経験を積むことができるようになったのも、大事な変化の一つだったと思います。

それは若い世代の成長に大きく影響がありそうですね。

そのおかげで若い選手が早いうちにボルダリングにシフトすることが多くなりました。それまでは(世界ユース選手権でボルダリングが実施種目になかったため)リードで結果を出さないとユース日本代表になれなかったので、「高校生くらいまではリードを頑張る」という慣習がありました。それが若い世代からボルダリングに集中できることで、また先ほど言った練習環境が充実していることもあって、ボルダリングのレベルの底上げに繋がったと思います。

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2020年のボルダリングジャパンカップは、17歳で2度目の頂点に立ったTEAM auの伊藤ふたば(写真)のほか、
女子3名、男子2名の16歳が決勝に進むなど、新世代台頭を印象付けている。
若いうちからシフトできるというのは技術向上の面において大事なことですよね。

日本人選手は俊敏で体の使い方がうまく、指の力も柔軟で強いという特徴があります。今までは遅咲きというか、そうした能力は大人になってから伸びてくるというイメージでした。それが中学生くらいからボルダリングに集中できることで、いち早く世界で活躍できるレベルになっていきましたね。そういった流れに、楢﨑智亜選手を中心とした世代が乗ることができたのだと思います。

2015年頃から結果が出始めたということですが、若手選手が台頭してくるタイミングの他にも要因はありましたか?

2015年あたりから「コーディネーション」といってホールドからホールドへ飛びついたり、壁の中を走ったりと、シンプルに「登る」と言うよりかは、少しアクション要素の強い動きが多くなってきました。国際大会での課題の傾向が変わってきたところに、身軽で俊敏な日本人がマッチしたという面もあるのではないでしょうか。その象徴が、そうした動きを最も得意とする楢﨑智亜選手でした。

その課題傾向は今も続いていますか?

去年あたりから昔に戻ってきている感じはあります。壁を何歩も走るような極端な課題はなくなりました。オールドスタイルにコーディネーション系がミックスされて、「的確に登るレベル」も高くなければ登ることができない、難しい課題になってきたと思います。ただ、日本の選手もここ1、2年はそういったところも意識してトレーニングしています。その中で結果を出せているのは日本がトータルで強くなっている証拠だと思います。多くの日本人選手が上位に入った2019年の世界選手権がまさにそうでした。

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2019年の世界選手権八王子大会、男子ボルダリング準決勝(20名が進出)には、同種目にエントリーした日本人7名全員が駒を進めた。
W杯でも、壁にある課題の多くを日本人選手が占めて競技する様子が珍しくない。

真面目で勤勉な日本人。新世代台頭でさらに強くなる?

先ほど日本人は体の使い方や指の強さが特徴というお話がありましたが、やはりそれも強さに関係が?

指が強いというより、登りの中で指の力を生かすのが上手いということですね。指が強い選手は世界中にたくさんいますが、それを壁の中で出せる選手は多くありません。

そうした上手さはどのように身につけてきたのでしょうか?

楢﨑智亜選手らの世代には、型にハマった指導を受けてきたわけではない印象があります。時代的に、まだW杯や世界選手権で結果を出すという目標を明確には考えておらず、ある意味すごく自由な環境だったのでしょう。大会のためではなく、純粋に好きだから登る。結果に囚われず自由に登ることで、柔らかい登りが身についたのだと思います。

体の動きが柔らかいと、指先の動きも発揮しやすいんです。体が硬直すると指先の力も出しづらい。そうした環境で育ったことで動きの幅が広がり、それが単純な指の力とミックスされたときに伸び代があったということだと思います。

日本人の特性という面では、他にもありますか?

真面目で勤勉という面も大きいと思います。自分のことを客観的に考えたり、トレーニングをより深く考えたりできますよね。クライミングの課題は登ったら次、登ったら次といきがちですが、登れてもどこか納得いかなかったり、技術的に崩れていたりしたらもう一度登るとか、そういう真面目さが技術をハイレベルにしていく要因だと思います。

今後、日本のボルダリング界はどうなっていくと思いますか?

ちょうど楢﨑智亜選手らより5~6歳くらい下の世代が世界ユース選手権で結果を残すなど台頭してきています。今年は新型コロナウイルスの影響でW杯は開催されていませんが、来年あたりに再開されればそういった若手選手たちがデビューしてきます。日本代表には杉本選手やTEAM auの藤井快選手といったベテラン世代、楢﨑智亜選手らの中堅世代がいますが、そこに新世代が加わることで幅広い世代がせめぎ合うことになり、もっと面白い展開になることが期待できますね。

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  • 伊東秀和(いとう・ひでかず)
    1976年、千葉県生まれ。2002年、2003年のジャパンツアー年間王者。日本代表として2011年まで世界選手権5大会に連続出場(リード種目)。現在は『伊東秀和クライミングスクール』を主宰し、多くの日本代表選手からユース世代、一般の方まで幅広く指導している。スポーツクライミング大会中継などでの解説者としても活躍。
    公式インスタグラム https://www.instagram.com/hide9a2019/

取材・文:篠幸彦
写真:窪田亮

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