~プロが検証した生活圏の見落としやすいポイント~
今年も暑い夏がやってきました。スマホも人と同じように暑さが苦手で、夏になると「スマホが熱い」、「動きが重い」など、普段とは違う違和感を感じることがあります。こうした状態は、一般的に「スマホ熱中症」と呼ばれることがあります。
KDDIでは夏に発生する「スマホ熱中症」について、発生要因や影響を整理するとともに、実際の利用シーンを想定した検証結果も踏まえ、お客さまへご案内しています。
本記事では、以下の「見落としやすいポイント」に着目しました。
「え?こんな場所で?」
直射日光×密閉でスマホが急激に高温化!
【目次】
夏の高温期には、発熱に関するご申告が増える傾向があります。これは、スマホの動作により発生する熱に加え、外気温の上昇により高温環境で使用される機会が増えることが影響していると考えられます。
お客さまからのご申告例
<au/UQ故障サポート受付:株式会社アサイアン調べ>
①夏に「スマホが熱い」と感じる理由
一般的に電子機器は、動作時に熱が発生します。パソコンはファンで冷却できますが、スマホは小型化や防水設計のため、冷却機能を備えにくい構造となっています。
スマホのCPUやカメラ、バッテリーなど内部から発生した熱は、本体から放熱するしかありません。外気温が高い夏ほど熱がこもりやすく、冷めにくくなるため、「スマホが熱い」と感じる要因となります。
スマホの放熱
②夏に「動きが重い」と感じる理由
スマホは内部温度が高くなりすぎると、CPU処理性能の抑制や充電・カメラなどの機能に一時的な制限をかけて温度を下げ、表面温度の上昇によるやけどの防止や、高温によるバッテリーなど内部部品の故障や安全上のリスクを抑えるセーフティ機能を備えています。
その結果、「動きが重い」と感じるほか、充電の停止やカメラが起動しないなどの状態が現れます。こうした動きは不具合ではなく、スマホを保護する動作も「スマホ熱中症」と呼ばれることがあります。
スマホ熱中症のイメージ
スマホ熱中症は、日常の使い方の中でいくつかの要因が重なると起こりやすくなります。
ここでは、見落としがちな使い方に着目し、その要因を整理します。
スマホの使用温度は、一般的に周囲温度5℃~35℃とされています。しかし夏は外気温の上昇により、それを超える高温環境が日常的に発生し、意図せずスマホをそうした環境に置いてしまう場合があります。
では、身の回りにどのような高温環境の「盲点」があるのでしょうか。実際に検証を行ったところ、日常の置き場所によっては、直射日光や密閉などの条件が重なり、想定以上に温度上昇するケースが確認されました。
以下に生活圏に潜む盲点とその実測結果をご紹介します。
アスファルトの温度は60℃超え
砂浜や海辺のウッドデッキで60℃超え
直射日光のあたる防水ケースは70℃超え
直射日光のあたる窓際の温度は50℃超え
直射日光のあたるバッグは70℃超え
スマホには周囲の明るさに応じて、画面の明るさを自動で調整する機能があり、これをONにしている場合、周囲が明るくなるほど、見やすさを保つために、画面の明るさ設定を自動的に高く(より明るく)します。
このため夏に屋外でスマホを使用する場面では、日差しが強く、日が出ている時間も長くなることで、画面を明るくして使う時間が長くなり、その結果、消費電流が増加し、バッテリーの減りが早く感じられる場合があります。
この影響を確認するため、実際に室内と屋外(直射日光あり)でバッテリー残量の検証を行いました。
検証の様子
直射日光下では、スマホの画面はより明るくなり、同じ操作でも消費電流が大きく増加し、バッテリーの減りが早くなる傾向が確認されました。この消費電流の増加もスマホ温度上昇の要因となり、スマホ熱中症に繋がります。
なお、画面の明るさの自動設定をOFFにし、手動で暗くすることで消費電力を抑えることは可能ですが、屋外では視認性が低下し、使いにくくなる場合がありますのでご注意ください。またバッテリーの持ちを良くしたい場合は、日陰で操作する、こまめに画面をOFFにするなど、利用シーンに応じた使い方の工夫をおすすめします。
夏になるとスマホを冷やすためのさまざまなグッズが見られるようになります。これらがどの程度の効果を持つのか、検証を行いました。
貼付タイプ(PMC素材)
送風ファン
スマホを動画撮影状態とし、発熱が最も高くなる箇所に冷却グッズや冷却ファンを当てます。
今回の検証では、貼付タイプは当てた箇所に効果があり、送風ファンは端末全体の放熱を助けやすいという違いが確認されました。ただし、いずれも表面温度の低下や放熱の促進といった効果にとどまり、内部で発生する熱そのものを抑えるものではありません。そのため、冷却グッズはあくまでも補助的な対策として活用することをおすすめします。
夏は、屋外の明るさにより画面輝度が上がることで消費電流が増加し、同じ使い方でもバッテリーの減りや発熱を感じやすくなります。
補助的な対策として送風ファンは端末全体の放熱を助けやすくなります。
スマホは高温環境にさらされると、短時間でも内部温度が上昇し、端末やバッテリーに悪い影響を与える可能性があります。ここでは高温環境下で起こりやすい主なリスクについて整理します。
夏になると、屋外に駐車した自動車の車内温度が大きく上昇することはよく知られていますが、同様の環境は身の回りにも存在します。バッテリーはその特性上、高温にさらされることで劣化が進みやすいため、スマホをそのような環境下に置いたままにしないよう注意が必要です。
特に下記のような利用シーンでは、直射日光や密閉といった条件が重なり、外気温がそれほど高くない場合でも短時間でスマホが高温状態となる可能性があります。実際に検証を行いました。
①透明ケース(防水ケースなど)に待ち受け状態の端末を入れ、直射日光を当てる。(ケースに入れた端末をプールや海水浴場でレジャーシートの上に置きっぱなしにすることを想定)
防水ケース
サーモによる温度上昇
サーモによる温度上昇
30分程度の放置にて端末が最大75.6℃まで上昇
高温状態となったことで、端末を保護するためのセーフティ機能が動作し、電源がOFFとなる状態を確認しました。
電源OFF前のポップアップ画面
➁バッグに待ち受け状態の端末を入れ、直射日光を当てる
バッグ
サーモによる温度上昇
サーモによる温度上昇
30分程度の放置にて端末が最大54.2℃まで上昇
③待ち受け状態の端末へ直射日光を当てる
端末
サーモによる温度上昇
30分程度の放置にて端末が最大49.6℃まで上昇
(参考)当日の最高温度は29.4℃(さいたま市、5月17日、気象庁発表)
高温環境下では、バッテリー内部の化学反応が加速し、劣化や膨れの可能性があり、スマホに内蔵されたリチウムイオンバッテリーは、概ね45℃環境以上の環境にて著しく劣化します。
この影響を確認するため、バッテリーを85℃の温度環境下で検証を行いました。結果、容量の低下と膨張を確認しています。
<解説>
劣化メカニズムについては、信州大学 是津教授にもコメントをいただきました。
リチウムイオンバッテリーは、内部で化学反応によりエネルギーを蓄えていますが、高温になるとその反応が加速し、電解液の分解や電極表面に形成する被膜の破壊が進行します。
これにより、バッテリーの内部抵抗は上昇し、エネルギー効率が低下するとともに、繰り返し使用による「容量劣化」の速度が早まります。
今回の実験では容量の劣化と膨張が見られましたが、温度や期間、バッテリーの状況によっては、以下の可能性が否定できません。
日常の中で高温となる場所にも置きっぱなしにしないように注意しましょう。
リチウムイオンバッテリーに詳しい
信州大学 是津教授
夏の高温状態は放置すると劣化加速や膨張・発火といった安全性リスクにつながる可能性があります。
スマホ熱中症は、主に夏の気温の上昇によりスマホが高温になることで発生する症状となりますが、今回の検証のように、ディスプレイ高輝度でのバッテリーの持ちや高温環境下でのバッテリー劣化についても注意が必要であることが分かっております。これらスマホ熱中症をを防ぐためには、3つの条件を意識することが重要です。
これらの条件が重なると、発熱や消費電力の増加が同時に生じ、端末が熱くなる、動作が重くなる、バッテリーの減りが早く感じられるといった影響が大きくなります。
下記のポイントを意識しながら、夏のスマホ利用をより快適に、安心してお楽しみください。
●冷却グッズは補助
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検証/解説:システム戦略部 桑田卓哉