スマホにも冬支度を!高温・低温環境での注意点を品質のプロが解説!

今年も寒い季節がやってきました。冬に備えて、スマホを安全に使うためのポイントをKDDIでスマホの品質を管理する担当者がご紹介します。

高温環境はスマホの大敵

冬は気温が低くなり、身体を温めるためにさまざまな暖房器具を使うことが多いので、注意が必要です。

ストーブやヒーターの温風が当たる場所やホットカーペットの中、カイロと一緒に持ち歩くなどの高温になる場所はスマホが放熱できなくなり、熱を持ったままになってしまいます。

スマホが高温の環境にさらされると、バッテリーの劣化などの原因になる可能性があります。

<暖房器具の温度はどのくらい?>

<暖房器具以外での高温の場所事例>

<高温環境でスマホのバッテリーは劣化する?>

電気ストーブの直近(5cm)にスマホが放置されたと仮定し、恒温槽で85℃の高温環境を再現し、バッテリーの劣化の検証を実施。

⇒48時間経過でバッテリー容量は15%減少し、1~2mm膨張することも確認した。

<なぜ劣化するの?高温環境での危険性は?>

「リチウムイオン電池は、 温度にとても敏感な化学装置です。高温環境では化学反応が過剰に進むため、エネルギーを蓄えるための反応と、電池を壊す副反応の区別がつかなくなります。

それが''劣化''の正体であり、スマホを暖房器具の近くに置くなどは、実験室で化学反応を暴走させるのと同じような危険性を含んでいるんです。

温度上昇は「化学反応の2倍速ルール」(約10℃上がるごとに反応速度が2倍になる)で進むため、45℃を超える環境では劣化が一気に進行します。

高温下では電解液の分解や保護膜の破壊が進み、劣化や膨張、最悪の場合には発火の原因にもなります。

スマホをヒーターやホットカーペットの近くに置かないよう注意してください。」

結露にも注意

冬場は室内との温度差によって起こる結露もまた問題になることがあります。結露は、空気中の水蒸気が冷たい物体の表面で水滴に変わる現象で、急激な温度変化で発生しやすいと言われています。

結露の発生により、スマホ内部では電子部品に水分が入り込み、ショートや腐食することで、故障や動作不良を引き起こす可能性があります。また充電端子に水分が付いたまま充電すると、ショートによる発熱や発火の原因になるため、注意が必要です。

低温環境のスマホの弱点

冬を迎えるとバッテリー持ちが悪いとのご申告が増える傾向があります。冬にバッテリーの持ちが悪いと感じられたことはありませんでしょうか?

図:電池持ち悪いご申告

<冬になると、バッテリーの持ちが悪くなる?>

スマホの動作保証温度は、周囲温度5℃~35℃となりますが、この範囲を下回る低温環境では、スマホが十分な性能を発揮できなかったり、充電ができなかったりすることがあります。

  

これはスマホに内蔵されているリチウムイオンバッテリーの特性として、低温環境でもバッテリーの内部抵抗が大きくなってしまうためです。またリチウムイオンバッテリーは「内部の電解液をイオンが移動することで電流が流れる」仕組みですが、温度が低くなると電解液の粘度が上がることで、イオンが移動しにくくなり、バッテリーの持ちが悪くなるのです。ただしそれはあくまでも寒い環境での一時的な動作で、室内など快適な温度の環境では元に戻るのでご安心ください。

 周囲温度によるバッテリーの持ちを比較した実験結果

(動画再生を繰り返し、電源が落ちるまでの時間を比較)

<充電ができなくなる?> 

低温環境ではバッテリーの持ちの影響ほか、充電をしたはずなのに充電ができていないという症状も発生することがあります。これは低温環境でもバッテリーの内部抵抗が高くなると説明しましたが、その状態で充電してしまうとバッテリーを痛めてしまう恐れがあり、スマホ側で充電を停止する制御しているためです。

画像:恒温槽

 低温環境で充電ができない症状を確認する実験

(恒温槽で-5℃の環境をつくり、そこで充電不可を確認した)

●バッテリーを長持ちさせるワンポイントアドバイス!

バッテリーを充電し忘れた時など、なんとか1日バッテリーを持たせたい時、ディスプレイの輝度を変更することでバッテリーが長持ちする可能性があります。

  • 試験方法:動画を連続再生し、ディスプレイ輝度を100%と30%に設定して比較。満充電から電池が無くなるまでの所要時間を複数機種にて計測。
  • 試験結果:輝度を30%に設定すると、100%設定よりも約1.5~2倍長く使用できた。
図表:[画面輝度:100%⇒30%]、[電池持ち時間:約1.5~2倍長持ち]

KDDIでは、スマホを安全にご利用いただくための情報を発信しています。

<解説:品質管理担当者>

画像:桑田卓哉

システム戦略部 桑田卓哉