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サッカー日本代表戦会場で初の試み!「8K VRライブ体験」

2019.6.25

Sports

ひとめぼれスタジアム宮城で6月9日に行われたキリンチャレンジカップ2019「SAMURAI BLUE(日本代表) VS エルサルバドル代表」。代表選手たちの活躍により「2-0」で日本の勝利に終わったこの試合は、約3万8000人のサッカーファンが来場し、大きく盛り上がった。試合当日の13時ごろからスタジアム周辺は多くの観客で賑わい、フードコーナーやグッズコーナーには長蛇の列が見られた。

「JFAフットボールパーク/PKチャレンジ in 宮城」イベント会場に集まる子どもたち

8K対応VRカメラとモバイル型VR端末を用いた世界初の取り組み

そんな中、スタジアム横にある補助競技場では「JFAフットボールパーク/PKチャレンジ in 宮城」が開催された。ウォーキングサッカーやキックターゲット、PKチャレンジなどに参加者たちが挑戦するというイベントで、元日本代表選手がゲストとして登場。サッカーファンの少年少女が本番の試合開始まで全力で体を動かしていた。

実はこのイベントの裏側では世界初の取り組みが行われていた。イベントの様子を8K360度カメラで撮影し、特設ブースに設置された4Kディスプレイ搭載のモバイル型VR端末に生配信したのである。

8K対応360度カメラを用いた取り組みの構成図

記者がVRゴーグルを装着して試してみると、目に飛び込んできたのは、補助競技場の広大なフィールド。周囲を見回せば、子どもたちがウォーキングサッカーでボールを奪い合っている様子がはっきりと見える。高画質な映像からは遠くのボールがゴールへ転がる様子を確認でき、まるで自分がフィールドの上に立っているかのような臨場感を得られた。

8K対応360度カメラによる撮影の様子

このイベントは初めてVR体験する人たちに大好評。ゴーグルを外した後、本物の景色を確かめようと、補助競技場へと向かう人が少なくなかった。

記者も補助競技場を訪れると、グラウンド中央には8K対応360度カメラが置かれ、周辺の風景が常に撮影されていた。その撮影された映像はグラウンド外に設置されたPCで映像処理され、クラウド上にアップロード、モバイル型VR端末へストリーミングされる仕組みになっている。効率的な映像配信の技術を活用することで、高解像度の映像配信を実現しているとのこと

このプロジェクトに挑戦したのはKDDI プロダクト開発1部 プロダクト1グループの山崎あかりだ。今回の技術をイベントに導入した目的や、5Gと組み合わせることでどのような未来が期待できるかなどを語ってもらった。

VRの臨場感を高めるためにこだわった映像の高画質化

KDDI プロダクト開発1部 プロダクト1グループ 山崎あかり
KDDI プロダクト開発1部 プロダクト1グループ 山崎あかり

山崎によれば、このプロジェクトの目的は「JFAフットボールパーク/PKチャレンジ in 宮城」が行われていることをスタジアム来場者に広く伝えることだったそうだ。

「ひとめぼれスタジアム宮城は入り口が大きく2つあるのですが、両方ともかなり距離が離れているため、入場した他方の入り口付近でどんな催しが行われているのかをすぐに知ることができません。そのため、特設ブースでイベントの模様を中継すれば、多くのサッカーファンが興味を持って足を運ぶのではないかと考えたのです」

しかし、単にカメラで中継しただけでは、現地に元日本代表選手がいることや参加者がゲームを楽しんでいることが伝わりにくい。そこで8KVR映像を使い、フィールドの雰囲気を掴んでもらおうと考えた。

「私たちが高画質にこだわるのは、VRの臨場感をより高めるためです。8K映像であれば細部まで表現できるので、イベント会場に元日本代表選手がいらっしゃることもお伝えできるのではないかと考えました。高画質映像のリアルタイム配信は、全く新しいVR体験に繋がると思っています」

さらに、その発展に欠かせないのが、大容量のデータを高速で通信できる5Gの存在であると語る。

「5Gを利用すれば、360度カメラで撮影したサッカーの試合中継をフルタイムで配信することも可能になります。カメラの設置場所次第では、これまでと全く異なる景色が見えるようになり、スポーツの観戦スタイルが大きく変わるかもしれません」

視点を共有したコミュニケーション

今後VRサービス・デバイスはどのように発展していくのか。山崎はこのように語る。

「現在VRといえば、1人で楽しむものが多いというイメージですが、今後は利用者同士で互いの視点を共有し、複数人で一緒に体験できるサービスが増えていくだろうと考えています。他の人が何を観て楽しんでいるのか分かるようになれば、コミュニケーションを取りやすくなりますね。VR内でのスポーツ観戦や音楽ライブの鑑賞などがより楽しいものになるはずです」

また遠くない未来、VRデバイスは軽量化してスマートに普段づかいでき、インタラクティブに感動を共有できるデバイスへ進化すると予想している。

「『このチームのこの試合、この瞬間の感動』、その中には、リアルタイムでしか味わえない体験価値があるはずです。VR上でその臨場感をどのように伝えられるかが、今後の発展のカギとなります」

VRデバイスで現実の場所を超え、“その瞬間の感動”を多くの人と分かち合える未来が訪れるかもしれない。

文・堀田隆大

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